
日本シリーズでの鈴木。いいバッターになったね
もう打ち上げたかもしれないが、
広島の
鈴木誠也が、
ソフトバンクの
内川聖一たちと自主トレをしている。
昔はリーグが違うとはいえ、ほかのチームの選手と自主トレなんてなかった。時代が変わったね。
今年が3度目らしいが、スタートの2016年から誠也は本格的にブレークしたから、彼にとっては実りの多いものになっているようだ。
誠也はカープに入ったときから非常に力強いスイングをし、毎年のように体が大きく強くなっている。一軍半の時代からストレートはいくら速くても苦にしなかった印象があったが、これは若い選手は大体そうなんだけど、外に逃げる変化球には課題があった。
内川、いや内川先生は、そんな誠也にとってこれ以上ない師匠だと思う。
俺は投手出身だから打者の感覚とは少し違うのかもしれないけど、内川を見ていると、変化球をうまくバットに乗せることができる。沈む球もヒザを柔らかく使うしね。
実際、俺が
巨人の投手コーチだったとき、交流戦の前に内川のデータをスコアラーに出してもらい、徹底的に傾向をチェックしたときがある。
そのとき「追い込まれてからの変化球に強い」というのがあって、さらに調べると、一番打率が悪い球種が真っすぐだった。
だから、そのときは、「内川は追い込んだら真っすぐ」を投手陣の決め事にして、実際、抑え込んだように記憶している。
誠也に内川先生の変化球打ちのエッセンスを加えたことが、今につながっているのは間違いないと思う。
俺が鈴木の成長をあらためて感じたのは、2018年の日本シリーズだ。
第1戦の第1打席、初ヒットが右方向で、そこから広角に打ち分けた。ライトへのホームランもあったしね。重圧のかかる短期決戦で、勢いだけじゃなく、技術で稼いだ通算打率.455だったと思う。
ほんと成長したね。カープの四番の貫録も出てきた。
ただ、自主トレの記事で「打点王を狙いたい」とあったけど、俺はそれよりまず「トリプルスリー」を達成してほしいんだよね。
いまの鈴木に打率3割、30本塁打は難しくないハードル、というか実際、達成している。
問題は盗塁。ただ、昨年はケガもあって4盗塁だったけど、その前は試合数が少ないながら2年連続16盗塁。もともと足は速いから、逆にケガなく1年を過ごせたら自然と20盗塁を超え、30盗塁に近くなるのは間違いないと思う。
十分可能性はあるよ。
なぜ誠也にトリプルスリーにこだわってほしいかと言えば、カープの歴代スーパースター選手は必ず攻守走がそろっていたから。
トリプルスリーは
金本知憲と
野村謙二郎の2人だけだけど、
衣笠祥雄さんは30盗塁以上が2回あるし、
山本浩二さんも20盗塁以上は4回。現監督の
緒方孝市は最多が36本塁打ながら3年連続盗塁王、タイプは違うけど、俺の恩師・
古葉竹識さんも2回盗塁王を取っている。
三番の
丸佳浩が抜け、四番として昨年以上のプレッシャーはあるかもしれないけど、まだ24歳。チームが3連覇したんだから、今年は少しわがままになって自分のスタイルを追求してもいいんじゃないかな。
特に盗塁というのは、30代になったら増やすことは簡単じゃないからね。
カープの先輩・
高橋慶彦さんがモチーフの小説じゃないが、2019年は「走れセイヤ!」と言いながらカープ戦を見ることにしよう。
写真=BBM