
桐蔭学園高の主将・森敬斗は練習からストイックなまでに、自分自身を追い込んでいる
2018年のドラフトは高校生野手が大豊作だった。第1回1巡目入札では、11球団が高校生野手3人に集中(報徳学園高・
小園海斗遊撃手に4球団=
広島が交渉権、大阪桐蔭高・
根尾昂遊撃手に4球団=
中日が交渉権、大阪桐蔭高・
藤原恭大外野手に3球団=
ロッテが交渉権)。結果的に第2回(外れ1位)で入札された天理高・
太田椋(
オリックス)を含め、3人の高校生遊撃手がドラフト1位指名を受けている。
1月25日、大阪市内で第91回選抜高校野球大会の選考委員会が行われ、昨秋の関東大会優勝校・桐蔭学園(神奈川)は16年ぶりの出場を決めた。復活の立役者となったのが三番・遊撃手で主将の森敬斗(3年)である。
とにかく勝負強い。昨秋の関東大会1回戦(対常総学院)で逆転サヨナラ満塁本塁打、決勝(対春日部共栄)では決勝アーチを含む2本塁打を放ち24年ぶり優勝の立役者となった。
森の魅力はバットだけではなく、攻守走3拍子の総合力にある。50メートル走5.8秒の俊足でダイヤモンドを駆け抜ければ、脚力を生かした鉄壁のディフェンス力も武器。三遊間や二遊間の球際の打球も、俊敏なステップワークと、遠投120メートルの強肩を生かした矢のような送球でアウトにしてしまう。守備においても、観衆を魅了できるのだ。
大舞台でも力を発揮できる裏付けは、練習量にある。写真の表情を見れば分かるだろう。メニュー一つひとつ、一切の妥協がない。今冬は「センバツ当確」というモチベーションがあったとはいえ、例年以上にハードなオフシーズンのトレーニング期間を過ごした。チームリーダー・森はチームを鼓舞。万全の準備が、試合での自信につながっているのだ。
好きな選手は同校の先輩であるロッテ・
鈴木大地のリーダーシップと、同じ遊撃手の
楽天・
茂木栄五郎のプレースタイルにあこがれる。
あるNPBスカウトは「もちろん(ドラフト)対象選手です」と、森の遊撃手としてのポテンシャルの高さに目を細める。だが、当人は現状では大学進学を軸としているという。とはいえ、昨年、夏前のタイミングで八戸学院大への進学を固めていた金足農高・
吉田輝星(
日本ハム)の例もある。つまり、センバツでの活躍をステップとして、プロ志望へと心が傾く可能性も否定できない。甲子園とは、夢をつかめる場所なのである。
母校・桐蔭学園高を率いる片桐健一監督は「スター性がある」と森を評す。スピードあふれるプレーに加えて、端正なマスク。各メディアでは「イケメン」と取り上げられるケースもあり、全国区となる甲子園を機に、女性ファンの熱視線を集めるのは間違いない。
甲子園出場が決まっても、浮かれているヒマはない。強肩強打の遊撃手・森は3月23日のセンバツ開幕に備えて、ストイックなまでに自身を追い込んでいく。
文=岡本朋祐 写真=大賀章好