
多くを語ることはないが、チームを束ねる術、雰囲気づくりには試行錯誤を重ねてきた筒香(写真中)
あいかわらず
DeNAの映像チームは仕事が早い。3月29日、本拠地でのシーズン開幕戦のオープニングセレモニーでは、開幕投手に抜てきされた
今永昇太の緊張の横顔、さらに試合前のベンチ裏の様子など、その日に撮影された映像が“特急”で編集され、セレモニーの演出としてビジョンに映し出されていた。
球団のカメラは、試合開始90分前のロッカーの様子もとらえていた。円陣になった選手たちがガッチリと肩を組み、キャプテンの
筒香嘉智がゲキを飛ばす。
「僕たちはこのチームで勝つために、斬るか、斬られるか。生きるか、死ぬかという世界を毎日、この仲間と過ごします。生半可な気持ちでは必ず相手にやられてしまう。相手を斬り、倒すために、この仲間と1年間、143試合やっていきましょう! さあ、いこう!!」
武士の心得になぞらえた闘志あふれる言い回しで、チームを鼓舞し、奮い立たせていた。ベイスターズのこうした雰囲気を垣間見るたびに、新鮮な気持ちにさせられる。いい意味でプロっぽくないのだ。個々の集団のようなプロ野球の世界で、まるで高校野球のような一体感が生まれている。
そのことを筒香に問いかけたのは開幕前のこと。「どうなんですかね。プロ野球と高校野球、人それぞれ価値も違うわけで、それは分からないですね。やっている僕らには分からないです」と予想どおりの答えが返ってきた。しかし、キャプテンはこう続けた。
「今シーズンは
ラミレス監督が掲げる『90勝』を目指していきます。大切なのはチームが一つになり、同じ方向に向かえているかです」。つまりは、形はどうであれ、リーグ優勝という目標に対して団結できているかが重要である、ということなのだろう。
開幕戦の筒香は1号3ランを含む5打点を叩き出し、今永に開幕戦の白星をプレゼント。「言葉」だけでなく、「プレー」でもチームをけん引する男の言動は、説得力がある。キャプテン就任5年目の筒香を中心にした“チーム力”でベイスターズは、上位進出を狙う。
文=滝川和臣 写真=小山真司