世代No.1の実績

30年ぶりセンバツ優勝の原動力になった東邦高・石川には優れた3つの魅力がある
大舞台で力を発揮できる選手こそ、超一流の条件だ。30年ぶり単独最多5度目のセンバツ優勝へ導いた東邦高・
石川昂弥。習志野高との決勝はまさしく、一人舞台となった。
初回の先制2ランに、3対0の5回には試合を決定づける2ラン。6対0で頂点に立った頂上決戦で、3安打4打点の大暴れである。投げては3安打完封で97球の省エネ投球。小技で揺さぶる、粘りが身上の習志野高打線に、ツケ入るスキを与えなかった。
石川には人より優れている魅力が3つある。
まずは、人間性。東邦高・森田泰弘監督は迷わず、昨秋の新チームで石川に主将を託した。
「(春夏連続出場した2016年の)藤嶋(
藤嶋健人、現
中日)もそうでしたが、石川もやれる人間。性格的にも大らかで、責任感が強い。そして辛抱強い。愚痴を言わない」
そして、全幅の信頼度。東邦高は平成元年のセンバツを制している。指揮官は主将、エース兼主砲の石川を前面に出して「平成最後のセンバツで優勝する」と常々公言してきた。
「石川(昂弥)という世代No.1の野手がいるので、チャンスと思って(甲子園に)来ました」
広陵高との2回戦で左越えの豪快な本塁打を放ったが、準々決勝(対筑陽学園高)では5打数無安打、準決勝(対明石商高)でも4打数無安打と快音が聞かれなかった。しかし、習志野高との決勝を前にして森田監督は「積極的に打ちにいっている。調子が悪いとは思っていない。今日はやってくれる」と、信頼が揺らぐことはなかった。結果的に指揮官が期待したとおりの活躍を見せたが、相当タフな精神力であることが証明された。
投打にわたる超スーパープレー。「平成最後の二刀流」として、森田監督が言うように「世代No.1」の実績を残したわけであるが、将来像はどうなのか? NPBスカウトの評価は「大型三塁手」で一致している。
卒業後の進路志望は「プロ一本」
あるベテランスカウトは「順応性」を、3つ目の魅力として語る。
「あのバットの軌道、そして柔らかさがあれば、木製でも十分にやっていける。走れますし、三塁守備も軽快な動きを見せる。スケールの大きな選手となることでしょう」
右の和製大砲。185センチ87キロと恵まれた体格であり、球団の顔とも言えるホットコーナーを任せるには、最適の人材だ。関係者によれば、卒業後の進路志望は「プロ一本」。甲子園のキャリアは、プロの評価に直結する。なぜなら、いくら素材が良くても、実戦で生かせなければ話にならないからだ。
2019年の高校生ドラフトは年明け以降、BIG4(大船渡高・
佐々木朗希、横浜高・
及川雅貴、星稜高・
奥川恭伸、創志学園高・
西純矢)を軸に推移してきたが、この枠に石川が加わり、新たに「BIG5」を形成。彼らがドラフト1位候補の一人として、スカウト戦線をリードしていくことは間違いない。
文=岡本朋祐 写真=BBM