
桐光学園高の2年生で四番・エースの安達は横浜高との準決勝で3失点完投勝利。バットでも追い上げとなる適時二塁打と大活躍を見せた
春の神奈川大会準決勝(4月27日)。勝てば関東大会進出が決まる大一番だ。試合途中から冷たい雨が激しくなり、足元もぬかるむ厳しいグラウンドコンディション。しかも、ゴールデンウィーク初日だというのに、季節外れの寒さ。だが、サーティーフォー保土ヶ谷で行われた桐光学園高と横浜高による強豪校対決は、ほぼ満員で埋まった観衆の極寒の震えさえも吹き飛ばす熱戦が展開された。
0対3のビハインドで迎えた7回裏、桐光学園高は四番エース・
安達壮汰(2年)の中越え適時二塁打で1点を返した後、無死二、三塁から唐橋悠太(3年)の3ランで一気に逆転に成功している。8回裏にも追加点を奪い、5対3で横浜高の春2連覇を阻止した。
悪条件の中でも、集中力を切らさなかった2年生左腕・安達の完投勝利は見事だった。2回表に4連打を浴びて3失点も、3回以降は味方の反撃を待ち、我慢の投球が、終盤の逆転劇につながったのは言うまでもない。
横浜高・平田徹監督は安達の投球内容について試合後、「3点は取りましたが、エンジンがかかってきて、終盤に疲れてくるかな? と思いましたが、最後は気力で押し切られた」と脱帽している。
好投の裏には、野呂雅之監督の絶妙な采配も見逃せない。3失点した2回表、二死となったところで先発捕手・
高橋建心(3年)に代わり、有賀大貴(3年)にマスクをかぶらせた。
「単調になって打たれた。ボール自体は悪くないし、何かを変えよう、と。練習試合でもあるケースです。(追いかける上で)3失点がマックスだな、と。安達は点を取られても立て直すのがうまい。そこを、買っている。あの辺りはうまくいった」(野呂監督)
高橋は投手を持ち上げるタイプで、有賀は奮起させるスタイルで、まさしく好対照のリード。このスイッチが「吉」と出て、桐光バッテリーは横浜高の強力打線を沈黙させた。
安達は志村ボーイズに在籍した中学時代、侍ジャパンU-15代表でプレーした逸材。当時のチームメートには横浜高の三番・
度会隆輝がおり、相手の先発投手も2年生・
木下幹也。「同じ2年生には負けたくなかった」と、闘志むき出しで132球を投げ切った。
桐光学園高は昨秋、県大会3回戦で慶應義塾高に敗退(5対12)し、攻撃力不足を痛感した。同校はバッテリーを軸にディフェンスを固め、細かい攻撃を得意とするチームカラーが伝統も「打てないと勝てない」(野呂監督)と、冬場はとことんバットを振り込んだ。逆転3ランを放った唐橋は「27個フライアウトでもOK。フルスイングできる体づくりをしてきた」と胸を張った。センバツ出場校・横浜高を相手に、オフシーズンから取り組んできた成果が発揮されたのだった。
桐光学園高の前回の甲子園出場は2年生エース・
松井裕樹(
楽天)を擁して8強へ進出した2012年夏。7年ぶりの激戦区・神奈川代表、そして令和元年の初代夏王者へ、充実の春シーズンを過ごしている。
文=岡本朋祐 写真=大賀章好