東芝野球部・大河原正人アナライザー
「まだやれると思っていた。でも自分で選んだ道なので、後悔はない」
そう笑顔で話すのは、昨年まで東芝野球部のベテラン外野手だった大河原正人だ。
昨年の日本選手権1回戦では都市対抗野球大会の準優勝チーム、三菱重工神戸・高砂との1点を争う接戦で7回に代打出場し、見事3ランを放った。大河原の一打もあり5対2でチームは初戦を突破、4強入りを果たしている。
1983年生まれで、現在35歳。横浜高時代は2000年、01年と夏の甲子園に2年連続出場をしている。亜大時代も1年時に全日本大学選手権と明治神宮大会で優勝を経験。大学卒業後、名門・東芝野球部に入部し、都市対抗野球大会には11年連続出場という輝かしい経歴の持ち主だ。
冒頭の言葉どおり、「まだやれる」ベテランが13年という長い選手生活に幕を下ろしたのはなぜか。実は自ら希望したわけではないが、前々からその話は出ていたと語る。
「それでもまだ続けたいと思っていたのは、社会人野球で選手生活を終えることは本当の意味で野球人生が終わることだから。だから去年の日本選手権も自分の中では代打ではなくスタメンで出場する気満々だった。ただ3ランは出たものの、正直、体はボロボロだった。できないなと分かったとき、次へ進む道を選んでいた」
現在は採用担当兼アナライザーとして東芝野球部を支えている。地方大会に足を運び、同じ西関東予選を戦う三菱日立パワーシステムズやJX-ENEOSの試合データを取り、分析をして選手に伝える。空いた時間で大学野球のリーグ戦を見て、次の東芝野球部を担う新しい人材を探す。大河原曰く、忙しさの度合いは現役時代よりもはるかに上をいくという。
「13年間現役で、仕事のことも会社のことも深いところまで理解していなかった。監督からは会社に行きながらも、できる限り野球部の近くにいてくれと言われているので、選手とのコミュニケーションは密に取れている。そのため自分が社業を通して見えてきた会社の状況は選手にも伝えている」
現役時代は数々の悔しい思いも経験したが、引退した今となっては楽しい思い出のほうが多く残っていると振り返る。
「いつかは監督がやりたい。そのために今はチームが日本一を目指すよう、自分も日本一のアナライザーを目指して勉強中です」
今年も都市対抗野球大会本戦への出場を決めた東芝野球部。底力のあるベテラン選手を新たにスタッフとして迎え入れ、まだまだ飛躍し続けそうだ。
文・写真=豊島若菜