
守備面のみならず、打撃面でもチームに貢献する伊藤光
勝利に導いたのは背番号29のバットだった。7月7日の
巨人戦(東京ドーム)、1点を追う6回、
DeNAは
細川成也の適時打で同点とすると、続く伊藤光が値千金の8号3ランを放って試合を決めた。
印象深かったのが、前日(同カード)に7号ソロを放った打席だった。2対4と巨人にリードを許した9回の第4打席。先頭打者の細川が初球を叩き遊ゴロで一死となり、打席に立つ伊藤光に課せられた役割は、誰の目にも明らかだった。「どんな形でも出塁する」──打席の伊藤光は、粘り強かった。3-2のフルカウントから3球連続でファウル。そして巨人・
中川皓太の投じた10球目、低めの変化球をレフトスタンドに運んだのだった。
「スライダーをうまく拾うことができた。何とか出塁することを心掛けていたけど、最高の結果になった」と振り返る伊藤光。この打席の前までに「左安打」「右安打」と2安打していても打撃が“雑”になることはなかった。
決勝3ランを放った7日の試合のヒーローインタビューでも、「(シーズン自己最多8号について)ホームランは確かに増えてはいるけれど、僕は次につないだり、出塁してチャンスをつくるという打者。役割をしっかり忘れずにやってきたい」と立ち位置がぶれることはない。良く言えば積極的な、悪く言えば淡白な打者が多いDeNA打線になって、貴重な存在と言えるだろう。
文=滝川和臣 写真=内田孝治