
食堂内でアップを行う鷺宮製作所ナイン
東京第一代表を決めた鷺宮製作所。一昨年までは9年連続予選敗退と“不遇”の日々が続いていたが、今やそんなことを忘れさせるほど投打ともにパワーのある野球を見せている。
取材日は朝から雨が降っており、グラウンドでの全体練習ができなかった。事前にマネジャーから室内練習場がないことは聞いていたが、到着したときには狭山事業所内にある食堂に全員が集まり、床に寝そべりアップをしていた。30分ほどのアップが終わると投手と野手に分かれ、野手陣はそのまま食堂に残り素振りを始めた。練習終盤になるとテニスボールを用いて守備練習をしたり、バント練習をしたりと、与えられた環境をうまく利用し、工夫を凝らす姿が随所に見られた。

素振りを行う新人の田中佑汰内野手。野手は1日3000本の素振りを繰り返す
チームは昨年から都市対抗本戦出場に向けて練習量を増やした。野手は1日3000本の素振りを行い、その後自主練習も行うという。
「練習量とチームの強さが比例していることは事実です。目良宏監督からは、3000本の素振りでも何も考えずに振るのではなく、工夫をしながら振るよう言われているので、角度を変えてみたり、片手で振ってみたりとしていると、2時間くらいは経っています」と話すのは、チーム一のムードメーカー・秦夢有希外野手だ。
投手陣は100キロの走り込みを行う。東京二次予選、第一代表決定戦のNTT東日本戦で8回無失点の好投を披露した野口亮太投手は、「走り終わるだけで19時になる日もありました。そのため、その後の自主練習はきつかったです。ただ、先輩たちが一生懸命練習する姿を見せてくれた。その姿を見ていたら下がだらけていられない。後輩たちがついていける雰囲気づくりを先輩たちがしてくれたことに感謝しています」と過酷な練習でもマイナスな空気にはならなかったと語る。
チームにはアナライザーがいないため、森光司内野手が率先してデータ管理を行い選手に共有する。「自分たちで考えてなんでもやる」というのが鷺宮製作所スタイルだ。これが選手一人ひとりの自信にもつながり、現在のチームを作り上げている。
恵まれた環境というのは、選手にとっては最良なのかもしれないが、それと勝負の世界で勝つことは比例しない。ゼロの地点から知恵を出し合い、考えながら練習や行動ができたことが、鷺宮製作所を強いチームへと変換させた秘訣なのだろう。このチームならやれる。そう感じさせてくれた取材だった。
文・写真=豊島若菜 公式サポーター日本野球連盟YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UC26D0n0-QuxyIghG0WqbN0A