今シーズンの夏の補強で積極的に動いているのが巨人だ。6月26日には日本ハムの藤岡貴裕・鍵谷陽平を2対2のトレードで獲得(巨人からは吉川光夫と宇佐見真吾が放出)。7月7日には、強打が売りの和田恋を放出して、楽天の古川侑利を獲得した。首位を快走する巨人だが、5年ぶりの優勝を目指すための補強にも抜かりがないようだ。では、同じように巨人が夏のトレードで積極補強をした年はどのような結果になったのだろうか? 巨人の夏のトレード補強をまとめてみた。 巨人は夏のトレード補強に消極的

7月24日のヤクルト戦(東京ドーム)に移籍後初先発した古川だが、1回4失点KOと結果を残せなかった
まず、過去30シーズンの「巨人が6-7月に行った交換・金銭トレードでの獲得選手」をまとめてみた。※2007年以前は6月30日がトレード期限
●2019年シーズン
6月 日本ハムから藤岡貴裕、鍵谷陽平を獲得(吉川光夫、宇佐見真吾を放出)
7月 楽天から古川侑利を獲得(和田恋を放出)
●2015年シーズン
6月 日本ハムから
矢貫俊之、
北篤を獲得(
矢野謙次、
須永英輝を放出)
●2012年シーズン
6月
ソフトバンクから
久米勇紀、
立岡宗一郎を獲得(
レビ・ロメロ、
福元淳史を放出)
●2011年シーズン
6月
ロッテから
大村三郎(サブロー)を獲得(
工藤隆人を放出)
●2010年シーズン
7月 楽天から
朝井秀樹を獲得(
栂野雅史を放出)
●2008年シーズン
6月 横浜から
鶴岡一成を獲得(
真田裕貴を放出)
●2006年シーズン
6月
広島から
木村拓也を獲得(
山田真介を放出)
●2003年シーズン
6月 日本ハムから
中村隼人を獲得(
河本育之を放出)
●2001年シーズン
6月 近鉄から
田畑一也、
真木将樹を獲得(
三澤興一、玉峰伸典を放出)
●1999年シーズン
6月
オリックスから
伊藤隆偉を獲得(
柳沢裕一を放出)
●1996年シーズン
6月 広島から
佐藤裕幸を獲得(金銭トレード)
●1994年シーズン
6月 ダイエーから
岸川勝也を獲得(
吉田修司を放出)
巨人はトレード期限が迫った6-7月にトレードで選手を獲得することが少なく、選手を獲得したのは30シーズン中11シーズンだけ。シーズン中は、トレードではなく、新しく外国人助っ人を獲得したり、育成選手から移行したりして、足りない戦力を補うようだ。
ちなみに、巨人がシーズン中に「複数回のトレード」を行うことは珍しく、過去30年では1999年、2011年、2019年の3度しか行われていない。1999年はオリックスから伊藤隆偉を獲得したほか、5月に
中日から
光山英和をトレードで獲得。2011年は大村三郎だけでなく、5月に金銭トレードで日本ハムから
高橋信二を獲得、
西武に
星孝典を放出している。
積極補強をした年の成績は?
では、今シーズンと同じく、6-7月のトレードで複数の選手を獲得した年のチーム成績はどうだったのだろうか?
まず2011年シーズンだが、この年は序盤から低迷。7月終了時点で首位に10ゲーム差の5位という厳しい状況だった。しかし、夏場になると打線が上向き始め、首位・ヤクルトを猛追。8月には首位まで1.5ゲーム差に迫るが、序盤の不調が響いたのか優勝にあと一歩及ばなかった。
トレードで獲得した大村と高橋はというと、大村は48試合に出場したがなかなか調子が上がらずシーズンオフにFA権を行使してロッテに出戻り、高橋はその年限りで自由契約。残念ながらトレード補強は失敗といわざるを得ない結果だった。
久米と立岡を獲得した2012年シーズンは、序盤は苦しむも最終的に2位に10.5ゲーム差をつけて優勝。日本シリーズでも日本ハムを破って日本一に輝くなど順風満帆のシーズンだった。立岡はその年は故障で活躍できなかったが、後にレギュラーの座を争う選手に成長した。一方の久米はその年限りで退団している。
近鉄から田畑と真木を獲得した2001年は序盤から首位を快走。しかし夏場に調子を落としてヤクルトに首位の座を明け渡すと、再び抜き返すことができずに2位でシーズンを終了した。この年は投手陣が不調で、トレードで投手2人を補強。田畑はリリーフで重宝されたが翌年に引退し、真木は残念ながら一軍登板がないまま退団した。どちらかといえば補強失敗だったといえるだろう。
木村拓也や鶴岡一成といった、トレードを獲得した選手がチームに欠かせない戦力になることもある。しかし、過去の例を見るとシーズン中のトレードが功を奏するケースはまれなようだ。
成功例は少ないが、新戦力が活躍すれば、主力を休ませることもできるし、レギュラークラスの選手もより奮起するだろう。チーム力が上がればそれだけ優勝の可能性も高まる。今シーズンの好調なレギュラー陣に割って入るのもそう簡単ではないが、先日のトレードで巨人に加入した鍵谷、藤岡、古川の活躍を期待したい。
文=中田ボンベ@dcp 写真=宮原和也