山本昌臨時コーチ(右上)の話を真剣に聞く小野(左)
ウォーミングアップのときから投手、野手関係なく声を掛けていく。臨時コーチとして高知県安芸市の
阪神秋季キャンプで指導を行っている山本昌氏。
江越大賀や
大山悠輔にも声を掛けていた。
一方、ブルペンに入ると「そのカーブはすごいね!」「いい真っすぐだ!」と各投手のいいところを褒めながら指導している。何か助言するときには「オレの経験ではね」と押し付けるようなことはしていない。
岩貞祐太や
横山雄哉の左腕投手は、ブルペン投球中でも積極的に質問していく。そこに強制的な雰囲気はなく、ブルペンは活気づいている。
そんな指導の下、来季の活躍が期待される
小野泰己も左肩の使い方に対してのアドバイスを受けていた。「僕の場合は、投げていくときに左肩の開きを数コンマ遅くする、開きを抑えることを言われました。実際にそれが出できたときは、軽く投げている感覚でも外角低めに伸びる球が投げられました」と小野はその効果を感じ取っていた。
もともと球持ちの長い投手だけに、左肩を我慢してホームベース寄りギリギリまでキープできれば、真っすぐの伸びは今まで以上となり、打者はもっと打ちにくくなる。実際にブルペンで左肩を我慢した投球フォームで投げているときには、素人が見ていても軽く投げているように見えながら、キレのあるスピードボールが外角低めのミットに収まっていた。
そのフォームは、以前メジャー取材時に見た355勝投手、グレッグ・マダックスのように軽やかだった。「僕もマダックスみたいに300勝以上できますかね?」とニコッと笑った小野。今季は春季キャンプ中に右ヒジの違和感もあり出遅れ、12試合登板で0勝に終わったが、小野自身の中で来季に向け、今何か道筋が見えているのかもしれない。
文=椎屋博幸 写真=BBM