
慶大・柳町達(ソフトバンク5位)は早大3回戦の初回に二塁内野安打。東京六大学歴代13位の113安打で全日程を終えている
4年間、8シーズン、一度も休まずにグラウンドに立った。
慶大・柳町達(4年・慶應義塾高)は1年春から4年秋まで全102試合で先発出場を果たした。
「振り返ってみると正直、長かったと思う。でも、あっという間だった、とも……」
10月17日のドラフトでは、ソフトバンクからドラフト5位指名。柳町はプロの世界で成功するための3条件を兼ね備えている。
まず、冒頭でも紹介した基礎体力。
「4年間で大きなケガはなかった。そこは強みなのかな、と」。180センチ72キロと細みだが、体の芯がしっかりしている印象である。長丁場のプロ野球の世界で生きていく上で、まず、キャンプで豊富な練習量をケガなく消化していくことが条件。スタミナが勝負の世界だが十分、やっていけそうだ。
次に、好不調の波が少ない打撃技術。
柳町は東京六大学歴代13位タイの113打(7本塁打、48打点、打率.291)を放った。慶大では
堀場秀孝(元
広島ほか)の125安打、松下勝美の123安打、
高橋由伸(前
巨人監督)の119安打、
喜多隆志(元
ロッテ)の114本に次ぐ歴代5位の数字を残している。
「歴史に名を刻めたことはうれしい。我慢強く使ってくれた監督(
大久保秀昭氏=今秋限りでの退任を表明)に感謝したい」
ミートが秀逸で、パワーも兼ね備え、50メートル走6秒2の俊足で内野安打も稼げるヒットメーカーだ。今年7月の日米大学選手権では打率.500(12打数6安打)で首位打者を獲得。150キロ超で、なおかつ、手元で動くと言われるアメリカ投手陣を攻略した高い技術力は、プロでも生きるのは間違いない。
最後に、端正なマスク。
香港の武道家・俳優であるブルース・リーに似ており、筋肉質で女性ファンも多い。プロ野球は人気商売の部分もあり、福岡の地元ファンのハートを射止める日も近いはずだ。
「プロは厳しい世界。気持ちを新たに、初心に戻って、上のレベル、一軍に入り込めるようにしたい」
3季ぶり37度目のリーグ優勝を遂げた慶大は11月15日に開幕する明治神宮野球大会に出場する。プロ入り前に、関東周辺の鷹ファンは“3拍子”そろった柳町のプレースタイルを、その目で確認しておくべきだ。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎