
球団、ファンからの期待は高まっている
1983年にドラフト1位で
ヤクルトに入団した
荒木大輔の人気はすさまじいものがあった。その「大ちゃんフィーバー」の再来と言ったら大げさだろうか。それでも、スワローズにはいつものオフとは違う期待感が充満している。
球団はここ最近、ドラフト目玉選手を1位で指名しては、ことごとく抽選で敗れてきた。2010年のドラフトでは
斎藤佑樹(早大、現
日本ハム)、
塩見貴洋(八戸大、現
楽天)を外して
山田哲人(履正社高)を獲得。また17年には
清宮幸太郎(早実、現日本ハム)を外して
村上宗隆(九州学院高)を獲得しているので、結果的には大成功というケースもあったが。
それでも抽選負けは寂しいもの。そんな負の連鎖を断ち切ったのが、今年のドラフトでクジを引いた
高津臣吾新監督だった。3球団競合の末、ついに第一志望だった甲子園のスター選手、
奥川恭伸(星稜高)を獲得したのだ。
その熱は球団内部から高まっている。11月6日には橿渕聡スカウトグループデスクが石川の星稜高グラウンドを訪問。仮契約前の視察は異例のことだった。「今どんな練習をしているか見たかったので」とその意図を明かした橿渕スカウトは、育成のガイドラインについて、本人に説明したという。
11月9日には、神宮大会に出場するドラフト4位の
大西広樹(大商大)を除く5選手が、愛媛・松山で行われている秋季キャンプを見学。プロが練習する姿を直に見た奥川は、「高い意識を持ってやらないと」と大いに刺激を受けた様子だった。
甲子園では150キロを超える快速球はもちろんのこと、マウンド上で時折見せるさわやかな笑顔も話題となった。松山でも、その奥川をひと目見ようと、ファンがぞろぞろとその後を追う場面も。「奥川フィーバー」の高まりを感じ取った球団は、例年よりも警備員を増員して、1月に戸田で行われる新人合同自主トレに臨むようだ。燕の未来のエースへ、その歩みはすでにスタートしている。
写真=BBM