11月14日、楽天の秋季キャンプが終了し、
三木肇新監督がMVPの一人に名を挙げたのがルシアノ・フェルナンドだった。シーズンでも来季につながる活躍をした今季、着実に力をつけている選手の一人だ。フェルナンドは2015年のドラフト4位で白鷗大から楽天に入団。しかし、ヘルニアによる腰痛も影響して18年オフに育成契約となってしまう。手術はせずリハビリとトレーニングで克服すると、今季の支配下登録最終日である7月31日、2ケタの番号を手にした。
だが、一軍で結果を残すまでに時間がかかったのは、ケガの影響だけではなかった。これまでコーチからさまざまなアドバイスを受け、あらゆる方法を試したが、なかなか自分に合う打撃スタイルは確立できずにいたのだ。そこで「最終的に責任を取るのは自分」と自身に合う形を模索。その信じた形でやり続けたことが功を奏した。一軍では重要な局面での代打起用も多かったが、硬くなることはなかった。「(打席では)この打席しかないと思って楽しんでいこうと。あとはコンフィデンス。自分を信じて打席に立つ、それだけですね」。
その思考の根源はマルチな能力にあるのかもしれない。日本語と母国語のポルトガル語に加え英語、スペイン語も話せるフェルナンド。力の使い方や体格は日本人よりメジャー・リーグの選手のほうが参考になるそうで、バッティングスタイルは今季41本塁打を放った
アクーニャJr.(ブレーブス)を見て学んでいるほど。だからこそ外国人選手との意見交換も今の自分の財産だ。「技術的なこともそうですし、精神的なことも聞けますから、よかったと思います」。
さらに今季後半から使用しているバットは「marucci(マルーチ)」という外国人選手がよく使用しているバット。「硬くてはじきがいい」というそれは自分にフィットした。日本人選手とも外国人選手とも違う器用かつ力強いバッティングは唯一無二の武器といえそうだ。
8月30日の日本ハム戦(楽天生命パーク)で2安打4打点と活躍した際のフェルナンドの涙は印象的だった。育成から這い上がった苦労人が初めてのお立ち台で見た景色は絶景だったに違いない。再び動き出したプロ野球人生。来季に向けた戦いはすでに始まっている。さらなる絶景を見るため、自分が信じた武器を磨いていく。
文=阿部ちはる 写真=BBM