
FAの秋山は移籍に関し日米両にらみという情報があるが、FAの動きの早さがまったく違う2つの機構で、難しい判断となりそうだ
今オフのMLBのFA市場は例年以上にスコット・ボラス代理人がコントロールしそうだ。平均年俸3600万ドル、総額3億ドル近い契約が予想される右腕ゲリット・
コールを筆頭に、右腕スティーブン・ストラスバーグ、アンソニー・レンドン三塁手とトップ3選手を顧客に抱えているからだ。
さらにニコラス・カステラノス外野手、左腕・柳賢振らもいる。ボラス代理人は提示額が顧客の価値に足りていないと見れば、長く待つことを厭わない。例えば昨オフのブライス・ハーパー外野手は契約合意が2月28日だった。しかしながら今年も同じ戦術を取ると、トップ3を独占しているだけにほかのFA選手も球団も、相当影響を受けることになる。果たしてどうなることやら?
ちなみに10月。MLB側がFA選手の複数年契約は、ウインターミーティング(今年は12月9日から12日)をデッドラインにしてはどうかと提案したが、選手会は当然拒否している。もっとも近年FA市場の進行が遅くなっているのはボラス代理人のせいだけではない。FA市場の前に、まずトレード市場が動くが、それに長く時間がかかってしまっている。
例えば今オフはレッドソックス。同球団は来季、ぜい沢税がかからないように、サラリー総額を2億800万ドル以下に抑えたい考えで、あと1年でFAになるムーキー・ベッツ外野手の放出を検討している。調停権を持つ彼の年俸は、来季は2770万ドル前後に膨れ上がり、彼の実力ならかなり良いプロスペクトと交換できるからだ。とはいえ、獲る側も慎重にならざるを得ない。
2770万ドルの年俸は高額で、1年でFAとなる選手の代償にそんなに良いプロスペクトは出したくない。交渉がうまくいかなければ、レッドソックスは同じくあと1年でFAになるジャッキー・ブラッドリー・ジュニア外野手か、左腕のデビッド・プライス、右腕のネーサン・イオバルディを出すかもしれない。
ほかにもカブスがクリス・
ブライアント三塁手、ウィルソン・コントレラス捕手、インディアンスがフランシスコ・リンドアー遊撃手など、大物のトレード候補の名前が上がっている。ゆえにオフになっても、30球団はすぐにFA市場に進めないのである。
このオフは、日本のトップ外野手、
秋山翔吾、
筒香嘉智の両選手がメジャー挑戦を宣言しているが、秋山に関しては日米両にらみゆえ、アメリカのスローペースがマイナスになる。日本のFA市場は早く進み、昨年、
浅村栄斗も
丸佳浩も11月下旬に決まったが、メジャーは例年どおりなら12月のウインターミーティングでも誰も決まっていない可能性がある。
このオフのFAの外野手にはマーセル・オズナ、カステラノス、ヤシエル・プイーグらがいて、秋山と同じタイプではないが、このトップが動かないことには次に進まない。日本球団はある程度は待ってくれるかもしれないが、それも限度がある。市場の動くタイミングが違い過ぎる。
その点、筒香はメジャーと決めており、ポスティングシステムでの移籍を模索している。1年前の
菊池雄星同様、スローペースでもさほど影響はない。カギは、菊池のマリナーズのように30球団の中から高く買ってくれる球団が出てくるかどうか次第なのである。