
12月9日、東京都内でロッテの入団選手発表会が行われ、ドラフト1位の佐々木朗希(大船渡高、前列中央)は決意を述べている
佐々木朗希が変わった。
12月9日、東京都内で行われた新入団選手発表会。報道陣から「目標とする選手」を問われた。
10月17日のドラフト前は、同様の質問に対して「いません」と、唯一無二の存在を目指していくのかと思わせた。
ところが、この日は「ニューヨーク・ヤンキースの
田中将大投手です」と、ドラフト1位の最速163キロは、はっきりと答えた。
ライバルについては、以前と変わらず
奥川恭伸(星稜高-
ヤクルト1位)の名前を挙げた。
思い起こせば、佐々木は奥川の発言に刺激を受けるタイプに映る。3月31日、対外試合初登板となった作新学院高(栃木)との練習試合で、「目指す投手像」として「大人のピッチング」と回答。センバツ甲子園で快投を見せていた奥川もテーマにしていたことで、佐々木に確認すると、その影響力を認めていた。
12月3日のヤクルトの入団会見で、奥川は目標とする選手を「田中将大」と語った。春先から、あるNPBスカウトは同投手の「スタイルとかぶる」と評価していただけに、想定内だった。佐々木はロッテで、背番号17を着ける。エンゼルスで同ナンバーを背負い、岩手の先輩として尊敬していた「
大谷翔平」を挙げるかと思ったが……。田中にあこがれる理由をこう語っている。
「ピッチャーとして完璧なところ。僕にとって理想。頑張っていきたい」
話を総合すれば納得できた。佐々木は将来的な目標として、最も優れた先発完投型である「沢村賞」を目指すと宣言したからだ。
田中は渡米以降、メジャー・リーグで6年連続2ケタ勝利。年間を通して安定した投球を披露している先発ローテ投手を理想とするのも、「沢村賞」目指す上では、当然の考えだ。
3月31日の練習試合の時点で「スケールが違う」と、1位入札の方向性を決めたというロッテ・
永野吉成チーフスカウトは、佐々木が写真撮影をしている横で、笑顔で語った。
「背番号17? カッコいいですねえ。高校時代(大船渡高)もタテジマですし、まったく違和感がない。(ユニフォームに)着られていない。しっかり着ている」
そういえば、奥川は入団会見で「沢村賞を目指したい」と抱負を語っていた。ここも佐々木と一緒だ。今年9月、高校日本代表として、U-18W杯(韓国)でチームメートとなって以降、2人は相当、刺激し合っているようだ。今年は19年ぶりの「該当者なし」だった同賞。セ、パに分かれた2人のスターが先発投手の名誉を争う日を、楽しみに待ちたい。
文=岡本朋祐 写真=BBM