
取材時の岡野。手に持っているのはドアラのぬいぐるみ
もしかしたら、「
吉見一起」になれるかもしれない――。
中日のドラフト3位ルーキー・
岡野祐一郎(東芝)には、そう思わせられる。
社会人で3年を過ごしてのプロ入りとなる岡野は、中日では
柳裕也、
笠原祥太郎、
浜田達郎らと同級生。昨年のドラフトでは指名漏れとなったが、2019年度社会人野球表彰で最優秀防御率賞を受賞する活躍で、プロ入りへアピールした。
岡野の投球は“考えるピッチング”。その投球理論が垣間見えたのが、本日発売の週刊ベースボール12月30日号用の取材のときだった。今年、東芝からは岡野のほかに、
宮川哲も
西武からドラフト1位指名を受けており、同時にプロの扉をたたく右腕2人の対談をお願いした。記者は、そこでの宮川の発言が気になった。それは「岡野さんは、負けへん」。
宮川の言葉どおり、岡野の最大の持ち味は「負けないこと」だ。入団会見でも「自分のセールスポイントは、調子が良くても悪くても、試合を作れる粘り強い投球」と話した。その肝は、抜群のコントロールにある。「僕は、バッターをよく見て考えながら投げています」と、打者の反応を見ながらボールを操っている。マウンド上でも冷静そのもの。ボールの出し入れ、駆け引きなどで試合を支配する。宮川も「岡野さんの、ピッチングの引き出しの豊富さには敵わない」と舌を巻く。
中日で抜群のコントロールを誇る社会人出身右腕といえば、吉見一起。2009、11年には最多勝利のタイトルも獲得した、“負けない投手”だ。共通点の多い先輩右腕から、学べることは多いだろう。良いお手本がいるチームに指名されたことで、25歳ながらさらなる成長も見込める。こんなに適した環境はない。岡野祐一郎は、“吉見一起2世”になれる――。そんな可能性を感じた。
文=依田真衣子 写真=会田忠行