12月23日、ロッテから金銭トレードされた涌井の楽天入団会見が行われた)
12月23日、
涌井秀章の楽天への入団会見が行われた。ロッテから金銭トレードによる移籍となった涌井には、先発ローテーションの一角として期待されているのはもちろんだが、戦力という部分以外にも獲得理由があったようだ。
「3、4年で主力選手の契約がだいたい切れるので、今度は中期的なビジョンを作っていかないといけない」。
石井一久GMは涌井獲得の理由についてこう語った。「彼はハードワーカーなので練習の姿勢やその背中を若手たちに見てほしい」。それは、一時的な強さではなく常勝チームを作るという就任時に掲げていたプランへの布石でもある。
現状として「短期的な優勝を狙っていけるチームにはなっていると思う」と語った石井GM。その上で必要なことはその先だ。「若い選手がポジションを狙ってくるところを蹴散らすくらいじゃないとチーム力も上がってこない。(涌井には)そういうポジションを期待したいと思っていますし、彼を蹴散らすことができれば若手が育ってくるということだと思う」。涌井は戦力としてだけではなく、中期的に優勝を狙えるチームを作るための若手育成に必要な存在だと語った。
このオフ、楽天は
美馬学や
ハーマンら、これまで投手陣の柱として活躍した選手、チームの柱である
嶋基宏がチームを去った。そこに
牧田和久、涌井らベテラン、美馬の人的保証として3年目を終えた
酒居知史を獲得している。中期的なチーム作りという観点でいえば若手選手を多く獲得すべきところだが、FAになる前の若手は獲得できない。そこで育成に適した人材を集めたのだ。
現役時代にともにプレーした涌井と牧田への信頼は大きい。「長く優勝争いをできるチームを作るということがすごく大事」。石井GMが抱く常勝チームへのシナリオ。そのための獲得だったとも言えるだろう。
「来たからには優勝したい」と入団会見で語った涌井。まずは2020年、再び輝きを取り戻し、楽天を常勝チームへと導けるか。その投球、そしてその姿に期待したい。
文=阿部ちはる 写真=井沢雄一郎