53年ぶりの投手出身監督

「一体感」を掲げ、チームの融和を前面に押し出す佐々岡真司新監督。果たして2020年の戦いはどうなる?
2019年、そして令和元年が暮れようとしている。19年は、球団史上初のリーグ4連覇を目指した
広島にとっては、大型連勝、大型連敗を繰り返した結果、最終的にはまさかのBクラスとなって連覇が途切れ、
緒方孝市監督が退任、佐々岡真司新監督が誕生するという激震のシーズンとなった。
シーズン後には主力選手の一人である
菊池涼介がポスティングを申請、この行方が注目されていたが、12月27日にカープに残留することが決定。ひと通り陣容も固まったところで、カープの来るべき2020年を少し占ってみたい。
まず、19年と大きく変わるのは、当然、佐々岡真司新監督になるというところだが、佐々岡監督は、カープでは1967年まで務めていた
長谷川良平監督以来、何と53年ぶりの投手出身監督だ。2018年まではファームでコーチを務めていたが、19年は一軍に上がって投手コーチを務め、チーム防御率を18年の4.12から3.68に良化させた。リリーフの勝ちパターンこそ、シーズンを通して確立することができなかったが、3連覇を支えてきた
中崎翔太、
一岡竜司、
今村猛が本調子を欠く中、これまでの実績にこだわらず、レグナルト、
菊池保則、
中村恭平、
遠藤淳志らを登用、リリーフ陣を崩壊させることなくある程度の形に保ったのは、むしろ評価されてもいいところかもしれない。
そんな佐々岡監督だけに、2020年も投手陣の安定には、ある程度の期待が持てる。すでに、19年秋のドラフトでは即戦力No.1と言われる
森下暢仁の一本釣りに成功、さらに19年にリリーフで実績を残した遠藤の先発転向で、昨年先発で回った
大瀬良大地、ジョンソン、
床田寛樹、
九里亜蓮、
野村祐輔と合わせて十分な先発のコマ数を確保できる見通しが立っている。
さらにリリーフにはDJ・ジョンソン、スコットと2人の150キロ級右腕を補強、ここに右では
岡田明丈、
島内颯太郎、左では中村恭平、
塹江敦哉といった、三振奪取率の高いパワーピッチャーと、昨年実績を作った菊池保を加えて抑えの
フランスアにつなぐ構想で、登用に若手が応えてくれれば、という条件は残るが、安定への筋道は見えている感じはある。
ロースコア型の野球スタイルへ
さて一方、菊池涼がどうなるかが決まらなかったこともあって、若干まだ構想がはっきりしないのが野手陣だ。菊池涼の残留で「二番・セカンド」が固まり、打力、守備力が大幅に下がることは避けられそうなのは救いだが、四番は
鈴木誠也、一番か三番のいずれかに
西川龍馬が入るとしても、まだ上位打線のイスが一つ固まっていないのだ。
昨年、主に三番を打ち、26ホーマーを放った
バティスタが、19年8月にドーピング違反となり、20年の契約がまだ白紙となっている穴がふさげるメドが立っていない。チームは、メジャー通算17本塁打している
ピレラを補強、この新外国人が三番にハマってくれればベストだが、19年のバティスタ並みの打力がいきなり期待できるかどうか。ピレラは内・外野ができるという触れ込みで、ポジションとしては、外野なら
野間峻祥と、ファーストなら
松山竜平と、サードなら
安部友裕との競争、という形になるが、ピレラが上位打線を打てるだけの打力を発揮できないときには、打線は昨年を下回る得点力になってしまう可能性もある。
16~18年のリーグ3連覇は、やや不安定な投手陣を打線が強力に援護する形で勝利を手にしてきたカープだが、おそらく20年は、逆に打線が挙げた少ない得点を、投手陣が懸命に守ってゆく、という、ロースコア型の野球にスタイルが変わってゆくのではないだろうか。投手出身の監督だけに、そういう形に向かっていくのは自然な流れだが、そうなると攻撃面では、もう一度、カープ伝統の機動力野球をしっかり構築し直せるかもカギになってくると思われ、むしろ野手出身のコーチ陣の手腕が問われるということにもなってきそうだ。
「一体感」を掲げ、一、二軍のコーチの入れ替えも行って、自らがファームでコーチをしていた時の首脳陣をある程度一軍にそろえて船出する佐々岡丸。球団創設70年を迎える20年には、いったいどんな結末が待っているだろうか。
文=藤本泰祐 写真=BBM