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プロ野球回顧録

90年代阪神BEST9は? 92年のV争いに敗れ、あとは「暗黒時代」へ/プロ野球回顧録

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近くて遠い90年代プロ野球――。いまから20年以上前、各球団ではどのようなことが起こっていたのか。プロ野球が熱かった90年代を12球団ごとに振り返る。

シーズン終盤一時はトップも


新庄(左)、亀山ら若い力で92年は2位と躍進


 80年代は「栄光と転落の時代」であり、90年代は「暗黒の時代」だった。なにせ、この10年間で最下位が6度もある。逆に、Aクラスは1度だけ。そのたったの一度の2位は、ニューウェーブによる一瞬の輝きによるものだったが、当時の中村勝広監督は名将になる絶好機を逃した。村山実監督からバトンを受け継いだ中村監督は、2年連続の最下位に沈み、3年目の92年は進退のかかったシーズンだった。タブーを破る、一つの決断がチームを変えていく。

「監督生命を懸けた」

 中村監督は不振の岡田彰布に代打を起用。それも実績のない亀山務を。早大の先輩・後輩という間柄でも遠慮しなかった。岡田は荒れたが、亀山はそこから台頭していく。積極果敢なヘッドスライディングでチームを活気づけると、今度は新庄剛志がスター街道をまっしぐら。仲田幸司猪俣隆湯舟敏郎中込伸野田浩司ら先発が安定し、抑えには田村勤がいた。湯舟はノーヒットノーランの快挙も達成(6月14日、広島戦)。外国人選手もオマリーパチョレックが活躍して、シーズン終盤に一時はトップに立った。

 しかし、不運が重なる。八木裕の幻のホームラン(9月11日、ヤクルト戦)もあった。田村の故障離脱も響いた。久万俊二郎オーナーから「作戦はスカタン」とのちに酷評されるように、中村監督の采配には冴えがなく、ヤクルトにうっちゃられてしまうのだ。

 さらに中村監督は愚かな妄想にとりつかれてしまう。今度こそと意気込む93年に向けて、攻撃力向上を重視するあまりに、先発要員の野田をオリックスへ放出し、代わりにFA権取得を翌年に控えていた松永浩美を獲得したのだ。

 このトレードが大失敗だった。野田はオリックス1年目に17勝を挙げ、95、96年の優勝にも貢献。一方の松永は「甲子園の土は幼稚園の砂場みたいや」と捨てゼリフを吐いて、たった1年でダイエー(現ソフトバンク)へFA移籍していった。せっかく整備できたはずの投手陣も崩壊した。

ドラフト、外国人補強で失敗


グリーンウェルは「神のお告げ」で退団


 再びBクラスに転落すると、阪神大震災の起こった95年には前半戦で沈み、中村監督は途中休養。球宴明けから指揮を執った藤田平監督代行も翌96年途中で解任。久万オーナーから翌年続投のお墨付きをもらたつもりでいたが、オーナーは否定。「世紀の勘違い」とまで新聞に書かれる始末だった。この非常時をメジャーの名将スパーキー・アンダーソンで乗り切ろうとしたが、実現しなかった。

 97年からはみたび、吉田義男監督が登板。「切り札」と期待されたが、阪神で唯一の日本一監督も戦力不足に苦闘した。「ミスター・レッドソックス」と呼ばれたほどの大物、グリーンウェルを獲得したが、キャンプもそこそこに途中帰国、戻ってきたと思ったらわずか7試合で故障。足の骨折を「野球をやめろという神のお告げ」と言い残して退団していった。

 とにかくドラフト補強にしても外国人補強にしても、失敗が相次いだ。90年代前半は高卒新人が育たず、外国人野手は90年代だけで19人も入れ替わった。

 吉田監督は2年というショートリリーフで、5位と最下位。もはや外部招へいしか道の残されていない阪神は99年、ヤクルト監督を辞任した野村克也に白羽の矢を立てる。開幕から2カ月は快調で好ムードになりかけたが、大豊泰昭が職場放棄という騒動を起こすなど、結局、人心掌握は失敗に終わった。

 不幸で、忌まわしく、屈辱の時代。この間、阪神は561勝754敗5分けの勝率.427という悲惨な成績で、関西の老舗としての伝統を汚した。

1990年代阪神BEST9


阪神・和田豊


■1990年代阪神BEST9

投手 湯舟敏郎 91~99年在籍 
202試合、55勝72敗3セーブ、防御率3.85

捕手 山田勝彦 90~99年在籍
612試合、265安打、打率.196、15本塁打、92打点

一塁手 オマリー 91~94年在籍
490試合、548安打、打率.318、74本塁打、304打点

二塁手 和田豊 90~99年在籍
1231試合、1405安打、打率.295、25本塁打、332打点

三塁手 八木裕 90~99年在籍
895試合、639安打、打率.255、99本塁打、348打点

遊撃手 久慈照嘉 92~97年在籍
758試合、629安打、打率.258、5本塁打、111打点

外野手 亀山努 90~97年在籍
349試合、286安打、打率.269、14本塁打、71打点

外野手 新庄剛志 90~99年在籍
923試合、813安打、打率.244、117本塁打、433打点

外野手 桧山進次郎 92~99年在籍
670試合、491安打、打率.241、80本塁打、294打点

写真=BBM

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