読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。 Q.プロの世界では投手の完全分業制が進んでいますが、先発と中継ぎ、そしてクローザーでは投げるイニングや求められるスキルが違うので練習メニューも異なると思いますが、日々のトレーニング、オフのトレーニングなど違いを教えてください。(群馬県・18歳)

イラスト=横山英史
シーズン中の日々のトレーニングや調整方法は、先発とリリーフでは大きく異なります。先発投手は登板終了後、約1週間後の次の登板に向けて、まずは回復系のメニューで100パーセントの体に戻すように努めます。その後、登板日が近づくにつれて、スピード系のトレーニングに切り替えて、体にキレを出していきます。イメージしやすいように一例(あくまでもたとえです)を挙げるとすると、登板直後はジョギング系のスピードのゆっくりした長距離走、登板日が近づくと全力で短距離のダッシュ系のメニュー、といった具合です。
日本では先発ピッチャーは中6日でローテーションされることが多いですが、この6日間の調整方法は各自に任されていて、走る量にしても、ブルペンでのピッチングの回数にしても人それぞれです。これまでの日本では2度入る選手が大半でしたが、強度の強い投げ込みを1度のみの選手も増えてきたように思います。ちなみに、MLBでは先発投手は中4日が当たり前ですから登板と登板の間のブルペン投球は1度がほとんどですね。
私の現役時代はまだまだ考えが古く、調整も半ば管理されていて、中6日で3度、ブルペンで投げさせられたこともありますが、これはナンセンスです。ブルペンでいくら投げても勝ち星にはつながりません。もちろん、何か新しいボールに取り組んでいたり、課題を持ってブルペンに入るというならば分かりますが、当時はただコーチが見たいだけ。「ブルペンで良かった」はあまりアテにならず、プロ野球選手である以上は、バッターに投げて抑えて初めてお金になるのですから、いつも疑問に思っていました。
先発投手の中6日(日本の場合)のスケジュールの一例を紹介しましょう。登板→(1)リカバリー/ウェート→(2)休日→(3)ブルペン50球→(4)各自調整→(5)ブルペン50球→(6)登板前日でノースロー。このような感じです。私の現役時代は5日目、6日目で連投させられていましたが、今はあり得ませんね。ちなみに、現役時代、そしてコーチになってから、ブルペン投球で私がチェックしていたポイントは、ボールのキレ、コースの投げ分け、高低の投げ分けといったあたりで、それでも50パーセントの信頼度と考えていました。
<「中編」に続く>
●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に
楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。
『週刊ベースボール』2020年1月27日号(1月15日発売)より