
菅野以外には不安が多い巨人の投手陣
巨人のオープン戦成績は2勝10敗4分け。勝率.167は12球団唯一の1割台となった。ほかの11球団の指揮官からは実績も経験値も抜きん出ている
原辰徳監督は「(勝利)数は少なかったけれど、非常にいい材料が目立った。もちろん負けた原因はあるけれど、僕の中では好材料の方が目立っている」と言い切った。
敗戦の中にあった好材料とは何か。レギュラー不在だった3つのポジションに光が射したことである。一塁はベテランの
中島宏之が打率.351、4本塁打をマーク。今季、新任した
石井琢朗野手総合コーチとのマンツーマン指導が復活の足がかりとなった。二塁は昨年、腰痛に苦しんだ
吉川尚輝、捕手では
小林誠司、
炭谷銀仁朗、
大城卓三の併用が示された。
「(毎試合のように)スタメンが変わった昨年よりは、多少、落ち着いた戦いができるのではないかなというのはありますね」と指揮官。新型コロナウイルスの影響で開幕も延期し、まだまだ調整期間も残されている。そういった面でもプラスの部分はあるが、球団ワーストとなる13試合連続白星なしで終わるなど不安材料も多い。
最大の懸案は先発陣だ。エースの
菅野智之を除き、一定の計算が立つような活躍を見せた投手がいなかった。昨年の韓国リーグで17勝を挙げた新外国人の
サンチェスは、3試合に登板し0勝1敗、防御率は10.57まではね上がった。計7回2/3を投げ2被弾を含む13安打に、他球団関係者は「伸びのある球を投げてはくるが、まだ日本のボールに適応できていないのだろう。思った以上に球質は軽いみたいだ」と明かす。
原監督が「両輪」と評して期待した2人に続くはずの
戸郷翔征も、3月10日のオープン戦(PayPayドーム)で日本一の
ソフトバンク打線に4回途中9安打10失点KOを食らった。期待値と伸びしろはあるが、まだ2年目の右腕だけにシーズンを通じての貢献は未知数。
田口麗斗、
鍬原拓也にも盤石の安定感はなく、不調の
桜井俊貴は二軍で再調整中。
今村信貴、
宮國椋丞もこれらを脅かすまでの存在にはなり得ていない。
中継ぎ陣も
中川皓太がコンディション不良で3月上旬の実戦登板はなし。
澤村拓一、
高木京介は控えるが、投げるたびに評価が上がる
ビエイラも日本球界は初めてである。右肩周辺の肉離れで先発ローテーション候補だった
畠世周、昨年途中からリリーフとして復活を遂げた
大竹寛が開幕に間に合わなくなったことも誤算だろう。投手陣はなかなか明るい材料が見当たらない。
打線は好調の中島だけでなく、
岡本和真、
丸佳浩が順調だ。2度のインフルエンザと背中の張りでキャンプ中に離脱した
坂本勇人も開幕延期で調整期間が与えられたことは歓迎される。懸念されるのは新外国人の
パーラ。本塁打が出やすいとされる東京ドームでもここまでは長打力に乏しく写り、どちらかといえば中距離打者の印象が強い。打線の中心を担えるかどうかは疑問符がつく。
原監督時代では2008年に2勝10敗3分けでオープン戦最下位に沈んだが、同年はシーズンではリーグ優勝を飾っている。「ファンの皆さんの前でともに戦う。そのことに飢えているね」。無観客試合が始まった2月29日の
ヤクルト戦(東京ドーム)から8敗4分け。果たして満員のファンが作り出す雰囲気が、投打に不安の残る巨人の空気を一変させてくれるのだろうか。
写真=BBM