「シーズン最高記録」には、歴代のレジェンドが築き上げたそうそうたる数字が並んでいる。しかし、2000年以降に更新された記録も意外と少なくない。今回は、往年のレジェンドを超えた「2000年以降に更新されたシーズン最高記録」を紹介する。
※( )内は記録達成年と当時の所属チーム 王や稲尾を超えた記録を残す
●打席……692
西岡剛(2010年・ロッテ)
シーズン最高打席は、南海の
広瀬叔功が1965年に残した676打席が40年もの間トップだったが、2005年に
阪神の
赤星憲広が689打席で更新。その後、2010年に当時ロッテに所属していた西岡剛が692打席で上回った。現在もこの数字が歴代1位だ。
●安打……216本
秋山翔吾(2015年・
西武)
シーズン最多安打は、1950年に阪神の
藤村富美男が残した191本が不動の記録だったが、1994年に
イチローが210本で更新。これが前人未到の記録かと思われたが、2010年に阪神の
マット・マートンが214本を記録すると、2015年には西武の秋山翔吾(現シンシナティ・レッズ)が216本の安打を放ち、マートンを上回った。
●二塁打……52本
谷佳知(2001年・
オリックス)
現在のシーズン最多二塁打は、2001年に当時オリックスに所属していた谷佳知の52本。この記録は毎日オリオンズ時代の
山内和弘が1956年に残した47本が40年以上にわたりトップだった。しかし、1998年に近鉄の助っ人
フィル・クラークが48本で更新。その後、2001年に谷が52本と記録を更新。2003年にロッテの
福浦和也が50本をマークしたが、谷には及ばなかった。
●本塁打……60本 ウラディミール・バレンティン(2013年・ヤクルト)
シーズン最多本塁打といえば、1964年に
巨人の
王貞治の残した55本が有名。2001年には近鉄の
タフィ・ローズ、翌2002年は西武の
アレックス・カブレラが並んだが、記録更新はならなかった。しかし、2013年にバレンティンが歴代最多となる60本を放ってついに記録更新した。ちなみに、この時60号を打たれたのは、2019年シーズンで阪神を退団、現役引退した
ランディ・メッセンジャーだった。
●長打率…….779 ウラディミール・バレンティン(2013年・ヤクルト)
2013年にシーズン最多本塁打数を更新したバレンティンは、シーズン最高長打率も更新している。それ以前は1986年に阪神の
ランディ・バースが記録した.777だった。ちなみに、MLBのシーズン最高長打率はバリー・ボンズが2001年に記録した.863。バレンティンの日本最高記録よりも1割近くも高いのだ。
●犠打……67犠打
宮本慎也(2001年・ヤクルト)
シーズン最高犠打数は、2001年に宮本慎也の残した67犠打が歴代トップ。宮本以前は、
川相昌弘が巨人時代の1991年に残した66犠打。わずかに1本差であるが、宮本は「バントの神様」と称された川相を上回る記録を残しているのだ。
●死球……28被死球
グレッグ・ラロッカ(2007年・オリックス)
シーズン最多被死球、いわゆる「ぶつけられた回数」は、2007年のラロッカの28被死球が歴代最多。だが、ラロッカが更新する前は、NPB史上初のトリプルスリーを達成した
岩本義行が、大洋時代の1952年に残した24被死球が最多だった。ラロッカまで50年以上も更新されなかったのだ。
●登板……90試合 久保田智之(2007年・阪神)
最多登板といえば、1961年に西鉄の大エース・
稲尾和久が記録した78登板が有名だ。しかし、この記録は2001年に
広島の
菊地原毅が同数で並び、2005年には阪神の
藤川球児が80登板で更新。その後、2007年に阪神の久保田がなんと藤川の記録を10試合も上回る90試合に登板し、現在もこの数字が歴代最多だ。
●セーブ……54セーブ
デニス・サファテ(2017年・
ソフトバンク)
1998年にハマの大魔神こと、横浜の
佐々木主浩が前人未到の45セーブを記録。この数字を超える選手はそうそう現れることはないと思われたが、2005年に
中日の
岩瀬仁紀が46セーブで更新すると、2017年にはソフトバンクのサファテがなんと54セーブと大幅に上回った。
●暴投……25個
新垣渚(2007年・ソフトバンク)
ピッチャーにとっては不名誉な記録ではあるが、シーズン最多暴投は2007年にソフトバンクの新垣の残した25個が歴代最多。新垣以前は、ヤクルト時代の
石井一久が1998年に記録した20個が最多だった。ちなみに、新垣は翌2008年にも歴代5位タイの15暴投を記録している。
●ボーク……12個
エステバン・ジャン(2007年・阪神)
ボーク記録は、1973年に当時南海だった
江本孟紀が残した10個が30年にわたりトップだったが、2003年に広島の助っ人
クリス・ブロックが11個で更新。その後、2007年に阪神のジャンが12個を記録し、この数字が現在も歴代最多だ。
「2000年以降に更新されたシーズン最高記録」を紹介した。シーズン記録には、「シーズン154試合出場」という現在のルールでは更新が不可能な記録や、
福本豊の106盗塁、稲尾和久と
ヴィクトル・スタルヒンが記録したシーズン42勝といった化け物じみた成績も並んでいる。しかし、これら以外では、すでに更新していたり、今後の更新が狙えたりする記録が意外とあるのだ。今シーズンが開幕したら、どのシーズン成績が塗り替えられるのか、注目したい。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM