
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京六大学春季リーグ戦は8月に開幕が延期された。社会情勢と大学当局の判断により準備を進めるが、試合会場は当然、神宮球場である
東京六大学野球連盟は5月13日、オンラインによる臨時理事会を開催し、春季リーグ戦の「延期」を発表した。
1試合総当たりで、会場は当然、神宮球場。開催時期は当初、第69回全日本大学選手権で日程を抑えていた8月12日から20日まで(12日に同大会の中止が決定)の9日間で、計15試合を消化する準備を進めていく。
とはいえ、今後の社会情勢によっては、中止の可能性も残す。まず、クリアしなければならない2つの条件は「緊急事態宣言の解除」と「大学側から構内での練習許可」。あくまで、最後の最後まで可能性を探っていくという。
さて、東京六大学野球連盟はこの日までに、神宮球場を管理運営する明治神宮と、プロ野球のホームグラウンドである
ヤクルト球団に、球場使用のスケジュールの了承を得た。
具体的な運営方法は今後、協議されるが「1日3試合」も想定されるという。リーグ戦開催予定の9日間、東京六大学とプロの併用日はない。すなわち、ヤクルトはビジターで公式戦を消化することになる。1925年秋に発足した日本最古の東京六大学リーグにおける、神宮の「優先権」。歴史を知る必要がある。
同連盟ホームページには、こう説明がある。
「大正15年(1926年)には本連盟の協力のもと、明治神宮野球場が完成」
建設費用の一部を補ったのである。当時、早慶戦をはじめ、東京六大学には絶大な集客力があった。収容数を増やすために1931年、スタンドを拡張した際にも、同連盟は工事費を負担している。収容人員2万9000人から、5万5000人の大球場が完成したのである。
プロ野球は62年から東映フライヤーズ(現
日本ハム)が使用を開始し、64年からは、国鉄スワローズ(現ヤクルト)が現在まで本拠地としている。つまり、プロは後発なのだ。
球場建設の経緯、そして94年に及ぶ伝統からも、神宮は「東京六大学の本拠地」「学生野球の聖地」として、深く浸透していることが分かる。プロとアマによる「共存共栄」が基本スタンスとしてあるとはいえ、今回の球場使用については、歴史的な背景が影響しているのだと、強く認識することができた。
文=岡本朋祐 写真=BBM