投手は自らの失点によって相手にリードされ、そのまま同点や勝ち越しをすることなく負けてしまった場合に「負け」がつく。そのため、条件さえそろえば、たった「1球」で負け投手になることもあるのだ。では、これまでに何人が「1球敗戦投手」を経験しているのだろうか?
2リーグ制以降は25人が記録
中日・星野も78年に「1球敗戦」を経験している
2リーグ制となった1950年以降、「1球敗戦」を経験した投手を以下にまとめた。
片山博(
広島) 1954年6月12日 対国鉄
長光告直(南海) 1958年6月4日 対近鉄
大羽進(広島) 1962年5月2日 対
巨人 村上雅則(南海) 1974年4月13日 対阪急
佐藤政夫(中日) 1977年9月3日 対大洋
星野仙一(中日) 1978年9月19日 対
ヤクルト 永射保(
西武) 1982年10月3日 対南海
森浩二(阪急) 1984年6月30日 対
ロッテ、1989年7月22日 対ダイエー
渡辺久信(西武) 1985年6月6日 対
日本ハム 今野隆裕(ロッテ) 1989年9月20日 対
オリックス 落合英二(中日) 1995年4月27日 対
阪神 柴田佳主也(近鉄) 1997年5月14日 対ダイエー
河野博文(巨人) 1999年8月5日 対ヤクルト
礒恒之(ロッテ) 1999年9月15日 対西武
梅津智弘(広島) 2005年6月29日 対阪神
林昌樹(広島) 2006年6月24日 対横浜
野口茂樹(巨人) 2007年8月11日 対中日
根本朋久(ロッテ) 2008年5月20日 対巨人
吉野誠(オリックス) 2008年7月29日 対西武
清水章夫(オリックス) 2008年8月28日 対
ソフトバンク 川岸強(
楽天) 2010年7月30日 対オリックス
柳瀬明宏(ソフトバンク) 2012年9月5日 対西武
藤江均(
DeNA) 2012年10月7日 対巨人
加藤康介(阪神) 2013年7月16日 対巨人
菊地和正(DeNA) 2014年4月4日 対広島
※( )内は当時の所属チーム 過去25人と少ないものの、10年、20年と長い期間が空くことなく、各年代に1球敗戦は記録されている。ただ、そのメンツはそうそうたるもので、星野仙一、渡辺久信といったNPB史に残るエースや、永射保、吉野誠など中継ぎで活躍した選手も1球敗戦を経験している。
“1球シリーズ”を制覇している中日・落合
過去25人のうち、森浩二は1球敗戦を2度記録。これは70年のNPB史の中で唯一の記録だ。また、中日の落合英二、広島の林昌樹、オリックスの清水章夫は1球敗戦だけでなく「1球勝利」の記録も持っている数少ない投手だ。
さらに落合は、ほかにも1球セーブ、1球ホールドといった1球シリーズを完全制覇している。
2リーグ制以前では川崎徳次が唯一記録
2リーグ制以前では、南海、巨人、西鉄で活躍した川崎徳次が巨人時代の1948年に記録している。5月29日の中日戦、1点リードで迎えた延長10回裏にリリーフ登板したが、まさかの2ランで逆転され、NPB史上初の1球敗戦投手となった。ちなみに川崎は1947年にも1球で逆転されているが、こちらは先に出塁を許していた投手に負けがついたため、1球敗戦投手にはならなかった。
過去に「1球敗戦」を経験した投手は全て引退しており、現役では0人。2014年以降は出ていないが、果たして次にこの不運な記録を経験するのは誰になるのか。今シーズンは新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れるなど異例づくめのシーズンだけに、6年ぶりのレア記録が飛び出すかもしれない。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM