2019年シーズンは、西武の森友哉が首位打者のタイトルを獲得した。序盤から好調を維持し、終盤は猛追する
オリックスの
吉田正尚を抑え、見事に捕手として史上4人目の首位打者タイトル獲得となった。最終的な打率は.329だったが、過去の偉大な先輩捕手が残したシーズン記録と並べると、森のシーズン打率は上から何番目になるのだろうか? 今回は「捕手のシーズン打撃成績」をまとめてみた。
打棒で野村克也を超えるのは難しいが……
●打率…….340 阿部慎之助(巨人/2012年)
2012年に巨人の阿部慎之助が記録した打率.340が、捕手としての歴代トップ。この年は主に四番を任され、首位打者、打点王、最高出塁率を獲得した。ちなみに、阿部の次は1991年に
ヤクルトの
古田敦也が残した.3398(なんと阿部とわずか6毛差)。歴代3位は2004年にダイエーの
城島健司が記録した.338で、2019年に森マークした打率.329は歴代5位となっている。
●本塁打……52 野村克也(南海/1963年)
捕手のシーズン最多本塁打保持者は、ご存じ「ノムさん」こと野村克也。1963年に52本の本塁打を放ち、捕手だけでなくNPBの最多記録(それまでの最多は1950年にロビンスの
小鶴誠が記録した51本)を樹立した。その後、翌1964年に
王貞治が55本で記録を更新するが、捕手記録としては今なお破られていない金字塔なのだ。この野村の記録に続くのが、1974年に
阪神の
田淵幸一が記録した45本。2000年以降では、2010年に巨人の阿部が残した44本が最多だ。
●打点……135 野村克也(南海/1963年)
打点も1963年に野村が残した記録が今なお破られていない。この135打点は三冠を達成した1965年よりも25打点も多く、NPBのシーズン打点ランキングでも歴代9位。2003年にはダイエーの城島が119打点と捕手として規格外の数字を残しているが、野村が残した記録には及ばなかった。2019年の森は105打点と奮闘したが、偉大な先輩を超えるのは難しそうだ。

ダイエー・城島健司
●安打……182 城島健司(ダイエー/2003年)
捕手のシーズン最高記録は、2003年にダイエーの城島健司が記録した182本。この年の城島は144試合にフル出場し、他にも打率.330、34本塁打と大暴れ。
井口資仁や
松中信彦らとともに、ダイハード打線を形成した。次に多いのがまたもや城島で、阪神時代の2010年にも捕手として歴代2位の168安打を記録。歴代3位はヤクルトの古田で1997年の164本。西武の森が2019年に記録した162安打は歴代4位だ。
●盗塁……32 荒川昇治(大洋/1952年)
歴代最高記録は、1952年に大洋の荒川昇治が記録した32個が最多。強打と走力も兼ね備えた選手で、1リーグ時代にはホームスチールも記録している(1948年10月5日
中日戦)。1950年には25盗塁、1951年には15盗塁を記録。ロビンスから大洋に移籍した1952年に、歴代記録となる32盗塁を達成した。ちなみに捕手のシーズン盗塁記録上位にはNPB黎明期の選手ばかりが並ぶが、唯一近年の選手で上位にランクインしているのが西武黄金期を支えた
伊東勤。1984年には20盗塁、1986年には18盗塁と「走れる捕手」でもあった。
●出塁率…….429 阿部慎之助(巨人/2012年)
捕手のシーズン最高出塁率は、巨人の阿部が首位打者となった2012年にマークした.429が歴代最高記録。前述のようにこの年はリーグ最高出塁率のタイトルにも輝いているが、実は最高出塁率のタイトルを獲得した捕手は、長いNPB史の中で阿部慎之助のみ。1991年に首位打者になった古田は、この年に.428の好成績を残しているが、中日の
落合博満が.473と歴代4位の圧倒的な数字を残しており、受賞が難しい年だった。
捕手のシーズン打撃成績を振り返ってみたが、2019年の森の成績で上位に食い込んでいるのは、打率(歴代5位)、安打(歴代4位)の2つ。本塁打と打点は上位との差が大きいので、今後歴代トップを狙うとするとシーズン打率と安打だろう。新型コロナの影響で試合数が少なくなる今シーズン。安打数の更新は難しいが、打率では可能性がある。開幕した際には森のバッティングに注目したい。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM