新型コロナウイルス感染拡大のため中止となった今年3月のセンバツ出場32校の「救済措置」として甲子園で開催される「2020年甲子園高校野球交流試合」。今夏は地方大会と全国(甲子園)も中止となった。特別な思いを胸に秘めて、あこがれの舞台に立つ球児や関係者たちの姿を追う。 攻守に躍動したプレー

加藤学園高の1年生・太田圭哉は鹿児島城西高との甲子園交流試合で「一番・遊撃」で出場。攻守に躍動してインパクトを残した
今年3月のセンバツで春、夏を通じて初の甲子園出場を決めていた加藤学園高(静岡)と鹿児島城西高。交流試合における「初陣対決」を制したのは加藤学園だった(3対1)。記念すべき白星へと導いた一人は169センチの「スーパー1年生」だった。
加藤学園高を2014年から率いる米山学監督は現役時代、名遊撃手として活躍。亜大では主将として2000年の大学選手権を制し、社会人野球・ホンダでもプレーした。この甲子園で「一番・遊撃」に起用したのは1年生・太田圭哉。「足の速い選手。思い切りも良い」。かつての一流選手の目に、狂いはなかった。
1回表、一死一塁からの遊ゴロ。甲子園最初のプレーで焦ってしまい、二塁への送球が逸れてしまった。しかし、ここで引きずらない。次打者の遊ゴロを逆シングルで好捕し、素早い送球で「6-4-3」の併殺を完成させた。
以降も軽快な守備で、完投した3年生エース右腕・肥沼竣をもり立てた。バットでも初回に四球を選ぶと、第2打席では左中間三塁打、第3打席でも左中間二塁打と自慢の俊足を飛ばした。「力負けしないスイングを心がけた。1年生らしく、しっかり自分のプレーをしようと思った」。8回には二塁盗塁を決めるなど、攻守に躍動した。
今回の交流試合は、センバツ出場校に甲子園で1試合を提供するという趣旨がある。1年生にとってはまさしく、先輩に連れてきてもらったという現実が色濃い。米山監督は「恐れずに、思い切ってやってくれた。今後につながってくれればいい」と目を細めた。
2、3年生が与えてくれたこの場をどう、生かすのか。言われるまでもなく、太田は理解している。小兵だが、とにかく元気が良く、前向き。グラウンドに入ると空気が変わり、使いたくなる気持ちも分かる。「令和の牛若丸」とも言っていい、遊撃手の将来性に注目だ。
文=岡本朋祐 写真=毛受亮介