
引退会見に臨んだ広島・新井
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は2018年9月5日だ。
「(チームの)これからを考えると、今年がいいんじゃないかと考えました」
この日、球団初の3連覇を目前に控えた広島の
新井貴浩が笑顔で自らの引退を発表した。
「自分の中では早い段階で、そういうふうには決めようと思っていました。8月に入って、鈴木さん(清明球団本部長)にお伝えした。球団はじめ、鈴木さんには『まだやめるな』と言っていただき、1カ月間考え直してくれと言われたが、8月いっぱい考えて、自分の気持ちが変わることがなかったので、そうしました」
15年、FA移籍した
阪神から広島に復帰。戻っての初打席、開幕戦の代打出場で受けた大声援は生涯の宝だ。
「罵声の中でやることも覚悟していたが、真逆だった。じゃあ、今度は、こうして声援を送ってくれるファンの人を喜ばせたい、絶対に喜ばせると思いました」
思いは通じた――。翌16年、広島は91年以来の優勝。新井は打率3割、101打点でMVPも手にしたが、「僕だけの力ではない」と表彰式で、個人の喜びは口にしなかった。
18年は控えに回ることも多くなったが、ベンチから大きな声を出し、出場チャンスがあれば全力を尽くす。そのプレースタイルに少しのブレもなかった。そして、引退を表明しても戦う気持ちはまったく切れなかった。
「後輩たちとうれし涙で終われれば最高だと思います。最後の最後まで全力で走りたい」
最後の最後まで走り抜く覚悟を示した。
写真=BBM