週刊ベースボールONLINE

高校野球リポート

「収穫の多いゲーム」2番手投手の好投で初戦突破した横浜高

 

野手にリズムを与える投球


横浜高で背番号10を着ける右腕・山田は武相高との1回戦で5回無失点と好投を見せ、初戦突破に貢献した


 秋季神奈川県大会が9月12日に開幕。横浜高は武相高との1回戦を11対0の5回コールドで制した。

 先発した右腕・山田烈士(2年)は被安打1の5奪三振と、難しいと言われる初戦の入りでリズムの良い投球を見せた。

 今年4月に就任した村田浩明監督は最速147キロの左腕エース・金井慎之介(2年)に「アイツに任せて負けたら仕方ない」と、全幅の信頼を寄せている。ただ「一人で投げ抜くのは難しい。球数制限(1週間で500球以内)もある。金井以降が出てこないといけない」と、2番手投手の確立が課題だった。そこで現れた新戦力が、背番号10を着ける山田だった。

 横浜高OBの村田監督は2003年春のセンバツで準優勝を経験し、2004年夏の甲子園では涌井秀章(現楽天)とバッテリーを組み準々決勝進出。日体大卒業後、保健体育科教諭として霧が丘高で野球部長を4年務め、13年4月、白山高赴任と同時に、監督に就任した。部員4人から一つひとつを積み上げ、18年夏は北神奈川大会8強と指導力には定評がある。

「私が就任時、(山田は)投げてもいない。戦力にもなっていなかった。投球感覚があったので、何とか力を引き出してやろう、と。努力しますし、取り組んでいくと伸びていった」

 神奈川県高野連主催の独自大会はオール3年生で臨んだ。一方で6月以降、2年生以下の新チームを見据えた準備を着々と進めていた。そこで、山田は急成長を遂げる。今秋に初めて25人のメンバー入りを果たし、この大事な初戦を任されるまでの立場を手にしたのだ。

 177センチ65キロ。ホップするようなストレートに、武相高の打者は高めのコースにも思わず手を出していた。またスライダーのキレも抜群で、手元でグイっと変化。テンポの良い投球は野手に良いリズムを与えていた。

 飛躍の要因は?

 ハングリー精神にある。村田監督は明かす。

「寮生イコール、メンバーというところがあるんですけど、山田は寮に入っていないんです。寮に入りたいと必死にやっている」

生徒に寄り添う指揮官


 少数精鋭の20人。残りの3分の2の部員は通い組と、厳しい競争の中で切磋琢磨している。この日は無失点に抑えたものの、四球を連発した場面もあり「これで寮に入れる? まだまだですよ」と手綱を締めた。

 村田監督は「大事なところではエースの金井」と明かすが「収穫の多いゲームだった」と、山田の台頭に喜びを隠せなかった。

「公立高校でやってきて良かった。生徒の見方など、白山高校でやってきたことが生きている。経験を横浜高校につなげたい」

 今夏の独自大会は準々決勝敗退。

「3年生と濃い時間を過ごしたかったが、日にちがない分、選手の力を引き出してあげることができなかった。新チームは言うことを聞いてくれて、ガラッと変えるくらいしてきた。本当の意味でのスタート。3年生の思いも背負っていきたい」

 生徒に寄り添う指揮官。村田イズムは名門・横浜高に着実に浸透している。

文=岡本朋祐 写真=大賀章好
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング