必死に食らいつく姿を貫けば……
今年7月に就任した豊田監督が率いる武相高は横浜高との1回戦で5回コールド敗退。学ぶべきことが多い試合だったという
秋季神奈川県大会が9月12日に開幕した。武相高は横浜高との1回戦を0対11と、5回コールド敗退を喫した。
母校・武相高を指揮する豊田圭史監督は今年8月に就任。コーチ、監督として6月末まで指導した富士大(岩手県花巻市)では北東北大学リーグで最長記録となる10連覇を遂げるなど、
西武・
山川穂高、
外崎修汰らを育成した。8月の神奈川県高野連主催の独自大会(4回戦敗退)を経て、新チームの県大会初戦の相手は全国屈指の名門・横浜高だった。
「力が上のチームに対等でいくには、先にミスをしないこと。相手にスキを作らない、突かれない。勉強させていただきました」
初回に四球からピンチを背負うと、失策で先制点を許し、主導権を握られる。3回には好走塁をきっかけに失点し、4回は失策で傷口を広げると一挙8失点と、一方的な展開となってしまった。守備面では相手に、スキを突かれた。「チームとして取り組んできたことが、ほとんど出せなかった」。とはいえ、練習試合では経験できない、公式戦でしか味わえない学習の場だった。
結果は真摯に受け止めるしかない。ただ、豊田監督には見過ごせないシーンがあった。0対11で迎えた4回裏、先頭打者がカウント3ボールから手を出して遊飛に終わった。また、一死一塁からは二盗を失敗。点差からすれば、考えられないプレー。攻撃面では、相手にスキを作ってしまったのである。
「カウント3ボール1ストライク、3ボールではサインを見ることになっているんですが……。自分の結果に走る。子どもなので、熱くなってしまって……。我を失ってしまった。そこは、徹底しないとダメです」
とはいえ、凡打でも決して手を抜かない。四球であっても、一塁まで猛ダッシュ。武相高の全力疾走は印象に残った。
「攻守交代を含めて、やれることは100パーセントやろう、と。打った、投げた、勝った、負けたではなく、必死に食らいついていく姿を貫いていけば、来夏には形になると言い聞かせています。帰ってから練習します!」
終日の日々を過ごす指揮官
気合と根性は、どこにも負けない。
この日の試合開始は9時30分。朝6時から打撃練習をしてから球場入りした。富士大時代から変わらない「方針」である。
「準備のところでいかに、差をつけるか。東京六大学、東都大学のチームに勝つためには何かやらないといけない、と取り組んできました。朝9時からのリーグ戦なんて当たり前のこと。3時、4時から練習して、3時間の移動も普通でしたから。ここは(学校から球場まで)近くて良いですよ」
就任から1カ月半、充実の日々を過ごしている。
「楽しいですよ。一生懸命やる生徒たち。何とかしてあげたい思いが強いです」
武相高は過去、夏4回の甲子園出場がある。すべて1960年代であり、68年夏以来、全国舞台から遠ざかっている。猛練習と全力プレーで、強豪校との差を埋めていく。
文=岡本朋祐 写真=大賀章好