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「松坂世代」が「松坂時代」に。“生みの親”が語る松坂世代の現在地と未来/Daiki’sウォッチ

 

「松坂世代」という言葉を生み出したフリーライターの矢崎良一氏に“松坂世代のこれまでの22年間”をうかがってきた前編。今回の後編では松坂世代を長きにわたり取材を続けてきた彼に“松坂世代の現在地と未来”をうかがった。

最後に投手が残るのは納得がいく


「松坂世代」のシンボルである松坂


――ずっと松坂世代を追ってきて40歳を迎える彼らの現在地をどう見ていらっしゃいますか?

「松坂世代の彼らはずっと松坂大輔を追ってきて、いつか決着をつけてやろうと思って人生を歩んできています。ただ、その決着はまだついていないと思っているし、これから先も松坂大輔を意識して彼らの人生は進んでいくと想像します。特徴的なのは松坂世代の現在地はそれぞれでまったく違う状況にあるということ。しかし、その状況に対して明るく、前向きにとらえ、まったく嫌味がないということ。話していて心を開いて話してくれる世代という特徴があります」

――今、彼らと向き合ってみて人間のタイプとしてどんな傾向がありますか?

「セルフプロデュース力が高い人間が非常に多いということですね。松坂大輔はセルフプロデュースをしていないように感じます。なぜならスーパースターであり、野球をプレーしているだけで自然とプロデュースされていくからです。現役引退をする人間が増えて、野球を離れてから今、自分が何をすることが大切か、どんな姿で生きているかを考えられる人間が多いのは、松坂大輔と比較しながら、自分たちがどう生きれば見てもらえるかを考えてきたからだと思います」

――松坂世代の現役選手が数少なくなってきました。やはり松坂世代は松坂大輔に始まり、松坂大輔で終わるのでしょうか?

「松坂大輔の現役生活を上回ることができるのは、おそらく和田毅だと思っています。和田は松坂世代では主役の位置にいます。それでいて自然体。自然と世代を引っ張っている人間。シーズン当初5人が現役でしたが、藤川球児渡辺直人久保裕也の引退で、いよいよ残るは松坂、和田という、これまでも世代をけん引してきた2人の投手が最後に残る形になりました。やはり、彼らの世代は相対的に野手が足りなかった世代でした。投手主体の世代であり、野手が少ない世代です。アトランタ世代は井口資仁松中信彦今岡誠、西郷泰之……プロ、アマの球界を代表する選手は野手ばかりの時代。傾向はまったく違います。しかもドラフトで育成枠がない時代でしたので、“センスはあってもちょっと背が低い”みたいな子はプロがなかなか指名してくれません。そういう選手が数多くいて大学や社会人に進んで活躍するからアマも盛り上がった。ただやっぱり身体のサイズも大きく、センスのある子は皆、投手でした。村田修一も高校時代は投手でしたよね。そういう意味では、慶應大学時代の田中さんは大きくて魅力がありましたよ。でも、野球を辞めちゃったから(笑)。そんなふうに生粋の大型打者がいない世代。最後に残るのが投手というのは納得がいきます」

98年後からの40年後を……


――矢崎さんは松坂世代のこれからをどう予想していらっしゃいますか?

「時代はグローバルな時代に変わり、今までの勝ちが通用しない時代になりました。つまりは常識が変わりました。だから今まで私が知らなかった松坂世代がどこから出てきて、実は松坂大輔をずっと意識しながら生きていて、急に世間の注目を集めてたりするんじゃないかと。これは松坂世代だからこそ想像できることで、この世代に生まれ、彼らのような特徴を持っているからこそ想定外に活躍する人間が出てくるんだと思います。高校まで野球をやっていたけど大学で学問に転じてノーベル賞学者になったり、政治家になって大臣だって生まれてくるかもしれない……非常に楽しみですよ」

――最終的に松坂世代はどうなっていくと考えていらっしゃいますか?

「松坂世代という言葉が最終的に松坂時代という言葉に変わり“時代”として残ると僕は考えています。時代を作り上げてきた人間たちですから。おそらく、これから“この子の人生を書きたい”と思う人が出てくると思う。これからの松坂大輔はもちろん、時代を作り続ける彼らの人生をのぞいてみたい。そして、次は彼らの20年後、還暦となった時に松坂世代の98年から40年後を書いてみたいと願っています」

取材・文=田中大貴 写真=BBM
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