31歳10カ月で2000安打を達成した坂本
11月8日の
ヤクルト戦(東京ドーム)で、
巨人の
坂本勇人がプロ野球史上53人目の2000安打を達成した。史上2番目の最年少記録となる31歳と10カ月での達成と、まだまだ衰える年齢ではないため、今後もさらに数字を伸ばすことが予想される。もしかすると、過去に
張本勲ただ一人しか到達していない3000安打も期待できるが、超えるべきレジェンドはほかにもいる。今回は、「坂本が超える壁」となる、通算安打歴代TOP10の猛者(もさ)をあらためてまとめてみた。
金字塔となる3085安打の張本
張本はロッテで3000安打を達成した
NPB通算安打の上位10人は以下のとおりだ。
●NPB通算安打10傑
1位 張本勲……3085安打
2位
野村克也……2901安打
3位
王貞治……2786安打
4位
門田博光……2566安打
5位
衣笠祥雄……2543安打
5位
福本豊……2543安打
7位
金本知憲……2539安打
8位
立浪和義……2480安打
9位
長嶋茂雄……2471安打
10位
土井正博……2452安打
NPB史に名を残すレジェンドが並んでいる。歴代トップは先述のようにNPB唯一の3000安打を記録した張本勲。
日本ハム(東映、日拓)や巨人、ロッテでプレーし、2000安打到達は32歳の1972年。歴代4位となる1733試合目での到達だった。そこから1981年まで現役を続け、金字塔となる3085安打を記録した。約10年で1000安打、それも体力が衰える30代半ばからの達成というのも驚くべきことだ。
歴代2位はノムさんこと野村克也。戦後初の三冠王に輝いたバッティングもさることながら、実働26年と長くタフにプレーし続け、2901もの数字を積み上げた。打撃だけに集中できず、また体を酷使する捕手でTOP10入り(TOP20で見ても)は野村のみ。監督としての手腕や名言がフォーカスされることが多いが、選手としても不世出の存在だった。
歴代3位は王貞治で2786安打。2000本到達は実はプロ16年目の1974年、2019試合目とほかのレジェンドに比べると遅かった。しかし、ここから引退する1980年までわずか6年で700安打以上を記録。現役最終年も105安打、30本塁打と引退が惜しいほどの数字だった。もし現役を続けていれば、張本を超える可能性もあっただろう。
王を超えて巨人歴代トップとなる可能性はあるが……
王は歴代3位の2786安打をマークしている
4位以降は王から200安打以上、差が開いている。不惑の大砲・門田博光は2566安打、鉄人・衣笠と世界の盗塁王・福本はなんと同数。金本や立浪といった、近年活躍した選手もTOP10入りしている。9位はミスタージャイアンツ・長嶋茂雄。プロ入りから5年連続で最多安打、引退までの全17シーズンで100安打以上などすさまじい記録を持っている。10位の土井正博は、実は通算安打TOP10の選手のうち、唯一の「生涯一度も日本シリーズ出場経験がない」という珍記録の持ち主だ。
4位以降は、坂本が今後コンスタントに出場し続ければ超える可能性は十分にある。坂本自身がまだ31歳と若いことを踏まえると、3位の王を超えて通算安打で巨人歴代トップに躍り出ることも期待できる。
しかし、王より上となると、野村は115安打差と届かないことはないが、張本は王から299安打、野村から184安打も差がある。坂本がこれから張本を超えるには、毎年100安打でも10年、120安打でも約8シーズンが必要なため、加齢による体力低下を考えると相当きつい数字だ。来シーズンは143試合数の予定だが、新型コロナの影響で仮に今年と同じく120試合になる場合は打撃機会が減り、調子を落とせば100安打未満になる可能性もある。2000安打到達は喜ばしいことだが、その先を見ると、まだまだ超えるべき壁は何枚もあり、またその一枚一枚が恐ろしいほど高いのだ。
超えるべき壁は高いが、現役選手で、かろうじてではあるが「張本の背中が見えている」のは坂本のみ。張本の金字塔を超えてNPB史にその名を刻み込めるか。今後のバッティングに注目だ。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM