
来季、完全復活の期待がかかる福山
近年のプロ野球ではリリーフ陣の安定が順位を左右することが多い。今年のパ・リーグの登板数トップ10を見てみると、
ソフトバンクが4人、
ロッテが1人、
西武が3人、
楽天が1人、
日本ハムが2人、
オリックスが0人だった。その中でも最多登板は西武・
平良海馬とロッテ・
益田直也の54試合。Aクラスに入ったチームにはやはり勝利の方程式または抑えが確立している。
今季の楽天の最多登板者は
牧田和久の52試合だ。昨季抑えを務めた
松井裕樹の先発転向、抑えに任命された
森原康平の負傷離脱などがあり、勝利の方程式を確立し切れず、特にシーズン終盤はリードを守り切れない試合が続いた。チーム打率がリーグトップなだけに、やはりリリーフ陣の立て直しは急務だ。
そんな中、松井裕が契約更改後に来季は抑えに戻ることを明言。さらに
石井一久監督が、チームトップの18セーブを挙げた
ブセニッツと来季も契約することを明かすなど、少しずつリリーフ陣が整備されている。だが、その中でも期待したいのが
福山博之だ。昨季7月に右肩と右ヒジの手術を行い育成契約となっていたが、今季9月に支配下復帰。中継ぎとして14試合に登板し6ホールドを挙げている(防御率0.75)。9月22日の復帰登板では楽天生命パークから大きな拍手が起こり、コロナ渦で声援を送れない中、スタンドには「おかえり」「待ってたよ」などのボードが掲げられるほどファンから愛される存在だ。また、支配下に昇格した際には石井GM(当時)からブルペンリーダーとして期待をかけられるほど、チーム内ではムードメーカーとしても重要な役割を担う。
2014年から4年連続で60試合以上に登板しており、今季の契約更改でも「50試合、60試合を投げてこそ本当の復活」と来季へ向けさらなる決意を誓った福山。19年に62試合に登板した
青山浩二が引退し、タフなリリーバーが不足しているだけに、鉄腕の復活は欠かせない。シーズン終盤の失速でBクラスに沈み、監督交代、コーチ陣の再編成と今オフもあわただしい楽天。来季こそ勝利をこぼさぬよう、鉄壁のリリーフ陣で臨みたいチームのブルペンには、背番号64は必要不可欠な存在となるだろう。
文=阿部ちはる 写真=BBM