
上を目指すために必要なものとは?
華麗なる復活劇だった。2020年、
ロッテから金銭トレードで移籍してきた
涌井秀章が11勝4敗、防御率3.60の成績を残した。そして優勝した
ソフトバンクの
千賀滉大、
石川柊太と並び、最多勝のタイトルを手にした。これは
西武時代(07、09年)、ロッテ時代(15年)に続く栄誉で、3球団での最多勝獲得は史上初の快挙となった。
そんな涌井だからこそ、言える言葉がある。3年ぶりのリーグ制覇、4年連続日本一を達成したソフトバンクを意識しながら、こんなことを口にした。「選手個人個人が考えることと、多少なりとも意見のぶつかり合いも必要なんだと思う。強いチームはできている」。良く言えば、仲の良いチーム。だが勝負に敗れれば、周囲からは「馴れ合い」ともとらえられてしまう。2球団を経験し、移籍してきたばかりの涌井らしい視点だった。
さらに「若手とベテランの考え方の違いに温度差を感じた」とも言う。確かに、潜在能力を認められながら、殻を破れない選手が多いのが
楽天の現状だ。「(若手に対して)厳しく言えば、自分もしっかりやらなくてはいけない。いい刺激を与えられれば」と、厳しく接することを宣言した。
クールな佇まいから誤解されがちだが、人一倍チームのことを考えているのが涌井だ。だからこそ、この状況に物足りなさを感じているのだろう。涌井が「鬼」となり、チームは生まれ変わることができるのか。新体制では
石井一久GM 兼監督に注目が集まりがちだが、再浮上へのキーマンは、実はこの右腕なのかもしれない。
写真=BBM