厳しい立場に、みなぎる気合
明大の新エースとして期待される竹田祐は最速146キロ。この春は「結果」にこだわり、評価を得た上でプロ入りすることが目標だ
明大・竹田祐(新4年・履正社高)には、絶対に負けたくないライバルがいる。
同じ本格派右腕の早大・
徳山壮磨(新4年・大阪桐蔭高)だ。
「すべて、良いところで負けている」
大阪対決となった3年春のセンバツ決勝で惜敗(3対8)。夏の甲子園切符をかけた府大会準決勝でも、力及ばなかった(4対8)。
「意識せずに、良い勝負ができればいい」
大学で先発での直接対決は、実現していない。早大は昨秋までの大黒柱であった主将・
早川隆久(
楽天ドラフト1位)が卒業。徳山は早大のエース背番号である「11」が託されることが決定した。今春のリーグ戦では、早川の後継者として1回戦の先発が有力視される。
一方の明大。2019年は
森下暢仁(現
広島、昨年のセ・リーグ新人王)が主将としてけん引し、38年ぶりの大学日本一へ導いた(主将の背番号は「10」。3年時に「11」を着けた)。昨年は
入江大生(
DeNAドラフト1位)がその座を継承。明大のエース背番号である「11」を着け、主戦投手としての仕事をまっとうした。
全幅の信頼が得られなければ着けられない「11」。就任2年目の田中武宏監督は1月8日の練習始動日の時点で「該当者なし。下級生にも遠慮なく取りに来い! と言ってある。何が何でも着けさせる番号ではない」と、3月のオープン戦までに適任者が出てこなければ、空位となる可能性を示唆している。竹田は昨秋までに東京六大学リーグ通算6勝。チーム内で最も実績があるが、1回戦の先発はもとより、背番号「11」も約束されていない。厳しい立場にあるが、逆に気合がみなぎる。
「自分がやらないといけない。入江さんからも『お前が引っ張っていけ!』と言われている。『11』を着けたら、神宮で弱々しい姿を見せることはできません」
2学年上の森下からは「気持ち」の大事さを教わり、入江からはフォークの握りを伝授された。そして、2人から吸収したのは「分かっていても打てない真っすぐ。勝つという執念を持っている。継いでいきたい」。
田中監督は「2〜3キロ、アベレージを上げていかないといけない」とフィジカル面での課題を語るが「良い意味での図々しさがある。大崩れしない」と期待感も語る。つまり「該当者なし」と手厳しいのも、新4年生・竹田への自覚を促す叱咤激励であることは明らかだ。
4月のリーグ戦開幕日に誰が「11」を背負っているのか。田中監督は「そこでいないと、柱がいないことになる」と苦笑いを浮かべる。すべては、期待の裏返し。竹田は履正社高時代の同級生である
ロッテ・
安田尚憲を刺激にし、大学卒業後のプロ入りを目指している。
文=岡本朋祐 写真=BBM