3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 作戦は成功し福本の盗塁はなし

阪急・福本。これは日本シリーズだが、この年の写真はヘルメットをかぶっているときといないときがある
今回は『1972年8月28日号』。定価は100円。
盗塁世界記録にひた走る“1億円の足”阪急・
福本豊。
この福本を止めるため、南海の兼任監督、
野村克也捕手が究極の案を編み出した。
「要するに、福本の前に、空いている塁があるから走ることができるんや。福本がどんなに走りたくても走れんように、前の塁を埋めとけばええ」
福本が一番だから八番か九番を歩かせるということだ。
これを聞いた東映・
田宮謙次郎監督は、
「そのためには余分な走者を出さなきゃ言えない。福本1人なら1点だが、走者を出したら2点もある。そんな危険なことはできない」
と否定していた。
8月8日の大阪球場の阪急戦で、野村はついにこの手を現実にする。0対2で迎えた2回二死から九番の投手・
石井茂雄を歩かせ、塁を埋めたのだ(敬遠ではなかった)。
試合前、野村監督の話を聞いた
西本幸雄監督は「だったら手がある。その走者がアウトになればええんや」と言っていた。
実際、石井はあまり気のない様子で盗塁し、アウトに。福本は次の回の先頭打者になった。
このときは福本がムキになり「だったらホームランを打てばええんでしょ」になり、空振り三振。
結局、この試合、福本の盗塁はなし。試合は南海が逆転し6対4で勝利している。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM