解説者からの高い評価

4月9日現在、2試合に登板し、1勝1敗、防御率3.00の楽天・早川
今年のパ・リーグで新人王の大本命と評価されているのが、楽天のドラフト1位左腕・
早川隆久だ。
早大の4年時に大ブレークした左腕はドラフト1位で4球団が競合。最速155キロの直球にツーシーム、カーブ、スライダー、カットボール、チェンジアップと変化球も多彩で制球がいい。オープン戦で早川の投球を見た元
広島の通算139勝左腕・
川口和久は週刊ベースボールのコラム「川口和久のスクリューボール」で以下のように論じている。
「自分自身がサウスポーだったこともあり、左腕というだけで気になっていたが、早川のファーストインパクトは、広島の
クリス・ジョンソンに匹敵するものだった。ジョンソンは2015年に初来日の左腕だが、最初に見たときゾクッとして体が震えた。あの球のキレは素晴らしかったからね。早川に感じた衝撃は体の使い方だ。今の時代、新人投手で150キロを出すのは珍しくないが、アピールしなきゃならないこともあって大抵、目いっぱいの力を入れて投げ込んでいる。そういう球は打者もタイミングが合わせやすく、長打もある。
早川は違う。球速は142、3キロだったが、自在に体を操っていた。足を上げてからリリースまでゆったり長いのだが、すべての関節、筋肉を柔らかく使い、手の振り、リリースがすごく柔らかい。あのフォームなら140キロ台前半でも打者はタイミングを合わせにくいはずだ。元
ロッテ他の名投手、早大・
小宮山悟監督の指導もあったのか自分の体をすべて把握したうえで操り、老練さすら感じるピッチングだった。この子が大学の卒業式を終えたばかりなのかと思ったら感動しちゃったくらいだ」
前評判に偽りなし。プロ初登板初先発した3月28日の
日本ハム戦(楽天生命パーク)で6回4安打8奪三振、無失点の快投。プロ初勝利と最高のスタートを切った。
ベテランのような風格の宮城

4月9日現在、オリックスの宮城は2試合に登板し、2勝0敗、防御率0.60と抜群の成績を残している
だが、その早川より「現時点で上」と評される高卒2年目左腕がいる。オリックスの
宮城大弥だ。
他球団のスコアラーは「僕は宮城のほうが上だと思います。早川は見栄えがいいけど、きれいなフォームで球筋も打ちにくいわけではない。初めて経験するシーズンの長丁場で疲れがたまった時期に、打者が対応してきたらどうかなと。宮城は違う。打者を見て投げる洞察力が備わっていてベテランのような風格がある。特にスピードが違う2種類のカーブが厄介です。緩急を駆使するので狙い球を絞りにくい」と警戒を強める。
その安定感は目を見張る。開幕から先発ローテーション入りし、今季初登板の3月27日の
西武戦(メットライフ)は7回5安打1失点で白星。今月4日の楽天戦(楽天生命パーク)では8回2安打無失点の好投で2勝目。早川との投げ合いを制した。
宮城は開幕前に週刊ベースボールのインタビューで、「うまく言えないんですけど、僕は理想が高い。尊敬する投手は、
山本昌投手(元
中日)ですけど、それは長く現役を続けたいという点で。ピッチングスタイルで言うと、今までにいないような投手になりたいんです」と語っている。
球界を代表する左腕になる可能性を秘めた早川と宮城。今後も幾多の名勝負が繰り広げられるだろう。果たして新人王の座はどちらの手に――。
写真=BBM