開幕直後に自身の口で活躍を予言
パ・リーグの本塁打王争いでトップに立つのが
ロッテ・マーティンだ。5月26日現在、47試合出場で打率.265、15本塁打、37打点。23日の
楽天戦(ZOZOマリン)ではドラフト1位左腕・
早川隆久のスライダーを豪快に振り抜くと、打球は右翼席のさらに上へ。球場の屋根を直撃する特大の14号2ランを放った。さらに、25日の
阪神戦(甲子園)では1点ビハインドの8回無死一塁で
岩崎優のスライダーを右翼席中段へ運ぶ逆転15号2ラン。値千金の一打でチームを交流戦初戦勝利に導いた。
昨年は104試合出場で打率.234、25本塁打。スタメン出場を打順別で見ると、三番が最多で46試合出場、二番は42試合出場、五番が16試合出場だった。今季は開幕から2試合連続三番で起用されていたが、3月28日の
ソフトバンク戦(PayPayドーム)以降はすべての試合に二番で出場している。開幕から11試合終了時点で打率.205、5本塁打のときに、自身の口で活躍を予言していた。「数字でいうと、絶好調と言えるわけではない。でも、ホームランが出ることはいいことだ。自分のキャリアは基本的にいつもスタートが良くない。気候が暖かくなれば、調子も上がってくるよ」。
決して一発狙いの粗い打撃ではない。相手の守備陣形や状況に応じ、絶妙のセーフティーバントを鮮やかに決めることも。野球IDが高いこともマーティンが二番で起用されている大きな理由だろう。
荻野貴司との攻撃的な一、二番コンビは相手球団にとって脅威だ。三番に打撃好調の
中村奨吾が控えるため、相手投手もマーティンとの勝負を避けるわけにはいかない。初回から大量得点を狙える打線は迫力満点。交流戦前までのチーム総得点215はリーグトップだ。

強打の二番としてビッグバン打線で存在感を発揮した小笠原
データ野球が進むメジャーでは一番は出塁率の高い選手、二番に長打力のある選手を据えるのが近年のトレンドになった。日本でも「二番打者最強説」が語られ、
巨人の
坂本勇人、
ヤクルトの
山田哲人が起用されたことも。「恐怖の二番打者」で連想するのが元
日本ハムの
小笠原道大だろう。プロ3年目の1999年に「二番・一塁」でレギュラーをつかむと、打率.285、25本塁打、83打点とブレーク。ヒゲを蓄えた武士のような風貌でフルスイングを武器にビッグバン打線の一角を担い、同年のベストナインとゴールデン・グラブ賞を受賞した。翌00年も主に二番を打ち、135試合フル出場で打率.329、31本塁打、102打点。その活躍は衝撃的だった。
そのほかに、元ダイエーの
カズ山本、
ペドロ・バルデス、元楽天の
カルロス・ペゲーロも犠打をしない「強打者の二番」として活躍した代表例だ。
ただ、戦後のプロ野球の歴史で主に二番を打ち、本塁打王を獲得した選手は出ていない。同僚の
レアード、ソフトバンク・
柳田悠岐、
オリックス・
吉田正尚、
西武・
山川穂高などライバルは多いが、マーティンがこのハイレベルなタイトル争いを制すれば大きな価値がある。ベースを一周し、中継用のカメラに向かって力こぶをつくり、「YES! マーティン!」の決めポーズもすっかりファンにおなじみになった。二番・マーティンは本塁打王に輝いてプロ野球の歴史に革命を起こすか。交流戦でも本塁打量産が期待される。
写真=BBM