ランナーが得点圏にいる場面でこそ真価を発揮するクラッチヒッター。勝敗の行方を左右する一打が、そのバットから生まれる。セ・リーグ各チームの規定打席到達者で得点圏打率No.1の打者は果たして誰? 記録は6月4日現在 読売ジャイアンツ
交流戦開幕直前の5月23日の
中日戦(バンテリン)の守備時に、左太もも裏を痛めて現在は登録抹消中だが、今季よりチームに加わり、主に一番を打つ梶谷隆幸の.281が得点圏打率No.1(リーグ7位タイ)。役割的には強力クリーンアップの前のチャンスメークだが、強烈なインパクトを残したのが古巣
DeNAとの開幕第2戦(3月27日、東京ドーム)だ。3点リードの7回裏、二死満塁で打席に立つと、右中間席にグランドスラム。これが移籍後初安打で、「早く1本出してチームの一員になりたかった」と安堵した。開幕直後は打率が上がらなかったが、その後、徐々に状態が上向き、離脱時点で打率.305の21打点。復帰が待たれる。
阪神タイガース
シーズンの約1/3の52試合が終わった時点でリーグトップの得点圏打率.410という非常に高い数字を残しているのが七番打者の梅野隆太郎だ。三番・マルテから六番・
佐藤輝明まで続く強力クリーンアップに続けとばかりに、得点に絡んでいる。打率は.240と低いのだが得点圏に走者がいるとその打力に磨きがかかる。5月14日の巨人戦(東京ドーム)では4回に中前へ決勝タイムリーを放ち、このときの得点圏打率が.538という驚異的な状況だった。六番・佐藤輝が得点圏打率リーグ3位(.327)、同5位に五番・
サンズ(.293)、同6位に三番・マルテ(.289)であり、ラクな形で打席に入れる部分もこれだけの数字を残す理由として挙げられる。6月に入り打撃が下降気味になっているのが気になるが、ここから盛り返してくれるはずだ。
東京ヤクルトスワローズ
ヤクルトは、塩見泰隆がリーグ2位の得点圏打率.375と高い成績を残している。規定打席に到達したのは最近だが、特に交流戦に入ってから打撃の調子は右肩上がり。27日の
日本ハム戦(神宮)では4打数4安打(1本塁打)など絶好調で、交流戦で無安打だったのは28日の
オリックス戦(京セラドーム)のみだ。チーム3位の得点数&打点数に加え、チームトップの11盗塁も光る。
山田哲人や
村上宗隆らにスポットライトが当たりがちだが、一番打者としての塩見は、間違いなくチームの“得点源”である。
広島東洋カープ
広島の6月4日現在の規定打席到達者は菊池涼介、
鈴木誠也、
西川龍馬の3人だが、得点圏打率は菊池涼が.256(リーグ15位)、
鈴木誠が.244(同17位)、西川が.255(同16位)とやや低調。この辺りがチーム打率がリーグトップでありながら、試合数が少ないとはいえ、チーム得点はリーグ5位という結果につながっている。小差の争いながら、6月4日現在のチームトップは菊池涼。開幕直後からリーグの首位打者を快走し、4月にはゲームを決める殊勲打を積み重ねた。新型コロナウイルスに感染し、5月後半は戦列を離れたが、復帰後は2戦目の6月4日の
楽天戦(マツダ広島)で三番に入ると初回にチャンスで適時三塁打と、勝負強さを見せた。今後、何番で起用されるかも気になるところだ。
中日ドラゴンズ
チーム防御率2.84は12球団を通じてトップ。唯一の2点台でもある。しかし打線のほうがさっぱりだ。打てないわけではなく、あまりにもチャンスに弱い。弱過ぎる。走者が得点圏に進むと金縛りにあったように打てなくなる。その貧打線の中において唯一、得点圏打率3割台(.326、リーグ4位)を記録しているのが主砲のビシエドだ。4月は上肢のコンディション不良で登録抹消となったものの、最短期間で戻って来た。5月29日の日本ハム戦(札幌ドーム)、4対4で迎えた8回に無死一塁から右中間突破の決勝タイムリー。「(一走の)高松(
高松渡)がよく走ってくれたから」と笑顔を見せた。「常にベストを尽くすことだけを考えている」とビシエド。その平常心が勝負強さの秘訣かもしれない。
横浜DeNAベイスターズ
主力の得点圏打率を見ると、四番に座る
オースティンは.333と頼もしい数字。代打で活躍する
山下幸輝も.333と勝負強い。しかし、彼らを上回るのが
大和だ。通常の打率は.235ながら、得点圏になると.423と打率が跳ね上がる。6月3日の
ソフトバンク戦(横浜)では、同点の7回、一死二塁で左翼フェンス直撃の勝ち越し適時二塁打を放って試合を決めた。試合後、
三浦大輔監督をして「勝負強いところ、さすが大和だな」と言わしめた。だが、オースティンも山下も大和も規定打席未満。規定打席到達者でチームトップは新人・牧秀悟の.268でリーグ11位。その他、
宮崎敏郎は.242(同18位)、
佐野恵太は.241(同19位)、
桑原将志は.212と総じて数字は低い。
写真=BBM