
四番としてリーグトップを走る打点を残している島内
週刊ベースボールの6月14日号に
楽天・
島内宏明のインタビューが掲載されている。そこには苦しみながらも楽しむことを忘れないユニークな言葉が躍っているが、まだまだ“らしさ”全開のコメントがある。
2019年8月に月間38安打を放つなどヒットを量産しているイメージだが、シーズン打率3割をクリアしたことはまだない。「3割ってやっぱりすごいです」と話す島内に3割へのこだわりを問うと、「ちょっと3割はあきらめていますね、僕(笑)」と返ってきた。謙遜はもちろんあると思うが、さらにこう続けた。「打ちたいですよ。そりゃもちろん打ちたいですけど、そこにこだわり過ぎても、と。『打率3割で出塁率3割』と『打率2割で出塁率4割』だったら、僕は出塁率のほうを選びますね」。
出塁することがチームのためだと語り、それは四番を務める今も変わらない。その不変のスタンスがあるからこそ、安定した成績を残せているのかもしれない。
2019年に四番に入っていたときには「四番なのだから打たなくては」という気持ちが強過ぎたのか、徐々に調子が落ちていった。そのことを考えると、この2、3年で精神的にも大きく成長を遂げているのだと思う。
以前、ロッカールームで動画を見ながらチームメートと楽しんでいた島内。するとその姿を見た
浅村栄斗から「緊張したことあるんですか?」と聞かれたそうだ。その日、勝てばクライマックスシリーズ進出という大事な試合前だったこともあり、浅村はとても緊張していたようだが、島内は笑って振り返る。「毎日緊張しているんですけど、なかなかそれが見えないみたいですね、周りには。損していますね」。本当に緊張したことがあるのだろうか、と感じる一方で、その笑顔から人知れず重圧を感じているのかもしれないとも感じた。
つかみどころのない人柄と本気とも冗談とも取れるコメント、妙に納得させられてしまう言葉。本当に不思議な雰囲気をまとっている選手だ。今年は3割に到達するだろうか。現在、リーグトップの52打点。本人はあまり望んでいないだろうが、タイトル獲得にも期待したい。重圧と闘いながら自身の成績を超えたとき、どんな言葉が聞けるのか楽しみだ。
文=阿部ちはる 写真=BBM