毎日、大毎、東京を経て
2017年から
中村奨吾が背負うロッテの「8」。この背番号について語ろうとするとき、長いファンにとっては釈迦に説法だろうが、チーム名にニックネーム、本拠地と激しい変遷を繰り返したロッテの歴史を原点から駆け足で振り返ってからのほうが、若いファンには分かりやすいだろう。言い換えれば、それほど由緒あるナンバーということでもある。
チームがロッテとなったのは1969年。起源はプロ野球が2リーグ制となった50年に参加した毎日で、ニックネームはオリオンズだった。いきなりパ・リーグを制し、その勢いのまま日本一に輝く最高の滑り出し。チームは58年に大映と合併して大毎となり、東京の下町に本拠地の東京スタジアムが開場して3年目の64年にはチーム名も東京に。だが、球団も球場も経営が苦しく、ロッテが最初に球団と関わったのは業務提携によるものだった。一方、東京スタジアムは72年いっぱいで閉鎖されて、ロッテは県営宮城球場を準フランチャイズとする“流浪の球団”となり、川崎球場が本拠地に定まったのは78年。現在の千葉へ移転し、ニックネームもマリーンズとなったのは92年だ。
この変遷にあって、ほぼ一貫して中心選手の背番号だったのが「8」。最長は
有藤道世(通世)の18年だ。ドラフト1位でロッテ“元年”の69年に入団、ロッテひと筋で一貫して「8」を背負い続けて、大卒の選手ではパ・リーグで初めて、そしてロッテだけで初めて通算2000安打に到達した好打者。まさに“ミスター・ロッテ”と呼ぶにふさわしい存在だった。
ただ、高知高で3年の夏に甲子園の第1試合、第1打席で顔面に死球を受けて入院、病院で日本一を味わい、近大でも知名度では劣ったが「実力は一番」と言われていた有藤が「8」を与えられたのは、単なる偶然ではない。起源の毎日で初代となった35歳の外野手で、のちに東京で監督も務めた
戸倉勝城は1年で阪急(現在の
オリックス)へ移籍して、いきなり欠番となった「8」。52年に2代目となったのが
山内和弘(一弘)だ。12年間の在籍で首位打者1度、本塁打王2度に打点王4度。大毎がパ・リーグを制した60年には本塁打王と打点王の打撃2冠でMVPにも選ばれている。63年オフに
阪神へ移籍して、引退するまで「8」を背負い続けた山内については、あらためて別の機会に詳しく紹介したい。
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内角打ちの名人だった山内
のちにロッテの監督になったが、選手としてはロッテの経験がない山内。有藤からロッテの「8」は“ミスター・ロッテ”の背番号といわれるようになったが、ロッテひと筋で終わった有藤は系譜では異色な存在だ。山内の移籍は“世紀のトレード”と呼ばれたが、歴代の選手も移籍と縁が深い。
“ミスター”の印象は今江が確立?
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2005年から16年まで今江がロッテの「8」を背負った
偉大なナンバーであることは間違いないものの、移籍で加入した選手も多いのがロッテの「8」だ。山内の後に4代目となったのが66年に大洋(現在の
DeNA)から来た
森徹。
中日では打撃2冠もあった強打者だが、3年で引退して「8」は有藤が継承。有藤は86年オフに引退、そのまま監督に就任して「81」となって、「8」は91年まで欠番に。翌92年から2年間は助っ人のマックスが着けて、94年からは
西武から来た
平野謙が3年。山内や三塁から最後は外野に転じた有藤と同様、外野手が並ぶ系譜ではあったが、ドラフト1位で97年に入団した
清水将海は捕手だった。2002年オフに清水が捕手ナンバーの「27」に変更すると、横浜(現在のDeNA)から中日を経て移籍してきた外野手の
波留敏夫が後継者に。波留は中日から引き続き「8」を背負ったものだが、波留の引退で「25」だったプロ4年目の
今江敏晃が05年に後継者となった。
有藤の本職だった三塁の後継者でもある今江から、「8」に“ミスター・ロッテ”という印象が確立された感はある。山内と並ぶ12年間「8」を背負い続けた今江だが、16年オフに
楽天へ移籍。山内と同じく新天地でも「8」でプレーした。その後継者が中村。三塁の経験もあるものの、「8」では二塁がメーン。近年はFAもあって移籍しやすい環境だが、ロッテひと筋の“ミスター”も継承してほしいと願うファンは少なくないはずだ。
【ロッテ】主な背番号8の選手
山内一弘(1952~63)
有藤道世(1969~86)
清水将海(1997~2002)
今江敏晃(2005~16)
中村奨吾(2017~)
文=犬企画マンホール 写真=BBM