新人王に価する成績を残した選手が複数いるシーズンは、「新人王」に選ばれなかった選手を「新人特別賞」として表彰するケースがある。例えば、
広島の
森下暢仁がセ・リーグの新人王に輝いた昨季は、巨人の戸郷翔征が新人特別賞を受賞している。では、他にどんな選手が「新人特別賞」受賞しているのだろうか?
新人特別賞には後に球界を代表する選手も多い
まずは、初めて新人特別賞の表彰が行われた1987年から1999年までの「新人特別賞受賞者」をまとめてみた。
●1987年
・西崎幸広(日本ハム)30試合15勝7敗、防御率2.89
初の特別賞受賞者は、後に日本ハムのエースとして活躍する西崎幸広。この年は近鉄の
阿波野秀幸(15勝12敗、防御率2.88)が新人王に輝いたが、阿波野と互角の成績を残した西崎も高く評価され、パ・リーグ会長特別賞に選ばれた。
●1990年
・
佐々岡真司(広島)44試合13勝11敗17セーブ、防御率3.15
・
潮崎哲也(
西武)43試合7勝4敗8セーブ、防御率1.84
・
石井浩郎(近鉄)86試合79安打22本塁打46打点、打率.300
・
酒井光次郎(日本ハム)27試合10勝10敗、防御率3.46
1990年は4人が特別賞に選出されている。佐々岡は13勝11敗17セーブと活躍したが、セ・リーグ新人王は当時新人最多となる31セーブを記録した
与田剛(
中日)が受賞。佐々岡はセントラル・リーグ会長特別賞が贈られた。
一方、パ・リーグでは、潮崎が防御率1点台、石井が22本塁打、酒井が10勝を記録。例年なら新人王に価する成績だが、投手4冠を達成した
野茂英雄(近鉄)がおり、いずれも新人王にはなれなかった。そのため、3人には特別賞を受賞することになった。
●1992年
・
若田部健一(ダイエー)27試合10勝13敗、防御率4.00
・
河本育之(
ロッテ)40試合2勝4敗19セーブ、防御率2.58
・
片岡篤史(日本ハム)125試合125安打10本塁打53打点、打率.290
1992年のパ・リーグは、ダイエーの若田部が10勝をマークし、日本ハムの片岡は125試合に出場して125安打。ロッテの河本は抑えとして19セーブと活躍した。しかし、新人王は13勝の
高村祐(近鉄)が選ばれ、若田部、片岡、河本はパ・リーグ会長特別表彰を受けることになった。
●1998年
・高橋由伸(巨人)126試合140安打19本塁打75打点、打率.300
・
坪井智哉(
阪神)123試合135安打2本塁打21打点、打率.327
・
小林幹英(広島)54試合9勝6敗18セーブ、防御率2.87
4選手がハイレベルな新人王争いを繰り広げた1998年のセ・リーグは、14勝を挙げた中日の
川上憲伸が制した。しかし、高橋や坪井、小林も川上に劣らない成績を残していたため新人特別賞が贈られることになった。
●1999年
・
川越英隆(
オリックス)26試合11勝8敗、防御率2.85
1999年のパ・リーグは、「平成の怪物」こと西武の
松坂大輔が16勝と活躍。見事に新人王に選ばれた。松坂には及ばなかったが、オリックスの川越も26試合に登板して11勝をマーク。この活躍が評価され、新人特別表彰を受賞した。
2000年代以降の新人特別賞受賞者は?
2000年以降の「新人特別賞受賞者」は以下のとおりだ。
●2007年
・
岸孝之(西武)24試合11勝7敗、防御率3.40
2007年は
楽天の
田中将大と西武の岸がともに11勝をマーク。しかし、パ・リーグ新人王には、高卒新人では歴代4位の196奪三振を記録した田中が選出。同数の勝ち星を残した岸には新人特別賞が贈られることになった。
●2008年
・
坂本勇人(巨人)144試合134安打8本塁打43打点、打率.257
2008年は、高卒2年目ながら全試合スタメンで起用され、134安打と活躍した巨人の坂本がセ・リーグ会長特別表彰を受賞した。例年なら新人王に選ばれてもおかしくない成績だが、この年の新人王は、67試合に登板し、11勝23ホールドと活躍した同じ巨人の
山口鉄也。育成出身として初の新人王受賞だった。
●2011年
・
塩見貴洋(楽天)24試合9勝9敗、防御率2.85
2011年は、9勝をマークしながら惜しくも新人王を逃した楽天の塩見が新人特別賞に選ばれている。この年のパ・リーグ新人王は、後にMLBに挑戦し、現在は楽天に所属する
牧田和久(当時は西武)。新人ながら22セーブと活躍した。
●2012年
・
武田翔太(
ソフトバンク)11試合8勝1敗、防御率1.07
2012年はソフトバンクの武田が新人特別賞を受賞している。この年のパ・リーグ新人王は、新人では歴代最多の72登板、41ホールドをマークしたロッテ・
益田直也。特にホールド数は、従来の新人記録である34ホールドを大きく更新と圧巻だった。
●2013年
・
菅野智之(巨人)27試合13勝6敗、防御率3.12
・藤浪晋太郎(阪神)24試合10勝6敗、防御率2.75
2013年のセ・リーグは、リーグトップの16勝など投手タイトル2冠を達成した
小川泰弘(
ヤクルト)が新人王を受賞。残念ながら13勝を挙げた菅野や、セの高卒新人では46年ぶりの2ケタ勝利の藤浪には、新人特別賞が贈られた。
●2017年
・
濱口遥大(
DeNA)22試合10勝6敗、防御率3.57
2017年は、DeNAの濱口遥大がセ・リーグの新人特別賞を受賞。22試合で10勝6敗、オールスターにも出場するなど活躍したが、残念ながら新人王は149安打をマークした中日の
京田陽太が選ばれている。
●2019年
・
近本光司(阪神)142試合159安打9本塁打42打点36盗塁、打率.271
2019年は、新人では
長嶋茂雄を超える159安打をマークし、36盗塁でタイトルを獲得した近本光司が新人特別賞に選出された。新人王は10代選手としては最多となる36本塁打を記録したヤクルトの
村上宗隆が選ばれたが、近本が新人王になってもおかしくない成績だった。
●2020年
・戸郷翔征(巨人)19試合9勝6敗 防御率2.08
2020年は、高卒2年目ながら先発ローテーションに食い込み、9勝をマークした巨人・戸郷が新人特別賞を受賞。10勝3敗、防御率1.91で防御率のタイトル争いを繰り広げた広島・森下にはおよばなかった。
過去の「新人特別賞」受賞者を紹介した。こうして振り返ると、坂本勇人をはじめ、後に球界を代表するプレーヤーに成長する選手も多い。今季もセ・パともに活躍している新人が多いため、新人特別賞者が出る可能性は高い。果たして誰が新人王になり、誰が特別賞に選ばれるのか、熱い新人王争いを期待したい。
文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM