守備力は球界屈指

7月7日のオリックス戦で移籍後初スタメンを果たした炭谷
楽天に心強い戦力が加わった。
巨人から金銭トレードで獲得した
炭谷銀仁朗だ。7月4日に発表されると、入団会見を行った5日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)で即ベンチ入り。7日のオリックス戦(京セラドーム)ではスタメンマスクをかぶり、
田中将大とバッテリーを組んだ。田中は6回3失点でマウンドを降りたが、チームは1対5の9回表に5点を入れて大逆転。9回裏は守護神の
松井裕樹を巧みにリードしてゼロに抑え、楽天は勝利を飾った。
投手の良さを引き出す配球、捕球する際のフレーミング技術、スローイング、ブロッキング……炭谷の守備力は球界屈指と評価が高い。
西武では高卒1年目の2006年に開幕スタメンデビュー。当時19歳の
涌井秀章(現楽天)と「10代バッテリー」で白星を飾って話題になった。
森友哉が台頭した時期も、
菊池雄星(現マリナーズ)が登板する際はマスクをかぶり、絶大な信頼を寄せられた。
18年オフにFA宣言すると、巨人・
原辰徳監督からの熱いラブ
コールを受けて移籍を決断する。炭谷は週刊ベースボールのインタビューで、「移籍に際しては原監督からの熱い思いを感じました。ただ、入ったからには競争ですから。選手である以上、そこを勝ち抜いて、キャッチャーというポジション上、なかなか難しいことではありますけど、143試合フルイニング出場。目標は常にそこに置いています。役割という点では、阿部(慎之助二軍監督)さんには『ピッチャーにはガツガツ言っていいから。一緒にやるぞ!』と言っていただいているので、その部分も意識してやっていきたいですね」と語っていた。
さらに「今回、移籍してきて、ジャイアンツが4年連続で優勝から遠ざかっていて、今年、逃せば球団ワーストということも聞いています。状況は理解しているので何が何でも優勝したいな、と。
広島からFAで移籍してきた
丸佳浩も思っていることだと思いますが、内海(哲也、西武)さんと長野(久義、広島)さんの件もありますので、ジャイアンツに来た意味を、結果で証明したいです」と決意を述べていた。

7月7日のオリックス戦では2安打もマーク
移籍初年度の19年は58試合出場で打率.262、6本塁打、26打点、昨年は56試合出場で打率.180、1本塁打、7打点。「第2捕手」としてリーグ連覇に大きく貢献した。特に
戸郷翔征の素質を開花させた功績は大きい。昨年は「専属キャッチャー」を務め、9勝をマーク。途中出場の機会が多く、守護神・デラロサとバッテリーを組んで試合を締める重要な役割を担っていた。
試合の流れを読む力に長ける
今季は44試合出場で打率.188、1本塁打、7打点。スタメンでの出場は18試合で、6月10日のオリックス戦(京セラドーム)から3週間以上遠ざかっていた。原監督と話し合いが持たれたことから、炭谷が新天地で出場機会を望む思いを巨人が尊重したのだろう。
楽天は正捕手・
太田光が24歳、昨年9月に巨人から移籍した
田中貴也が28歳とまだまだ経験が浅い。百戦錬磨の炭谷が加われば大きなプラスアルファになる。田中将大が8年ぶりに復帰した今季は優勝を狙える位置につけているが、6月上旬から6連勝、7連敗の後に4連勝、引き分けを挟んで再び5連敗と戦いぶりが安定しない。
選手個々の能力は高いが、負の流れになると歯止めがきかない傾向がある。試合の流れを読む能力に長けた炭谷が扇の要としてマスクをかぶれば、雰囲気も変わるだろう。現役時代にバッテリーを組んでいた
石井一久監督の野球観は把握しており、涌井、
岸孝之、
牧田和久、
浅村栄斗ら西武時代にともにプレーしていた選手も多いことから溶け込むのも早いだろう。
スポーツ紙の遊軍記者は「オリックスが少し走っていますが、パ・リーグは混戦でどのチームにも優勝の可能性がある。炭谷が楽天の逆転優勝に向け、救世主になる可能性は十分にあると思います」と分析する。新天地でどんなプレーを見せてくれるか楽しみだ。
写真=BBM