両雄の快挙に他のスター選手も躍動
2021年のオールスターが近づきつつある。去る20年は初めての中止、つまり初の2年ぶりとなる球宴だ。当たり前のことだが、オールスターの数字はオールスターだけのもの。オールスターに強かったのは
長嶋茂雄(巨人)だが、その通算444本塁打には、オールスター通算7本塁打は含まれない。
一方、投手には最長で3イニングまでしか投げられないというオールスターだけの制約がある。先発で完璧な投球を続けても、3回を投げ終えたら降板しなければならない。この場合の打者は最少で9人。この9人を、すべて三振で斬って取ったのが1971年、セ・リーグの
江夏豊(
阪神)だった。江夏は第1戦(西宮)に先発すると、3回裏まで9連続奪三振。ちなみに江夏は前年、最後の5人から連続奪三振、この71年の第3戦にも先頭打者から三振を奪っていて、オールスター15連続奪三振だった。
江夏の9連続奪三振は規定が変わらない限り決して破られることのないオールスターにおける最高の数字。並ぶ投手も簡単には現れないと思われたが、これに淡々と迫ったのが84年、セ・リーグの江川卓(巨人)だった。江川は第3戦(ナゴヤ)の4回表から2番手として登場すると、6回表二死まで打者8人から連続奪三振。だが、9人目の
大石大二郎(近鉄)が2ストライクからバットを投げ出すように当てて二ゴロとなり、8連続に終わった。このとき投じたのは持ち味の剛速球ではなくカーブで、三振振り逃げにして10連続を狙ったのだという。

84年の球宴第3戦で8者連続三振の江川だったが、9人目の大石にカーブを打たれ二ゴロに
ただ、この剛腕2人だけがスターというわけではない。71年の第1戦では2番手の
渡辺秀武(巨人)から
高橋一三(巨人)、
水谷寿伸(
中日)、
小谷正勝(大洋。現在の
DeNA)までオールスター最多の16奪三振。しかも5人はオールスター初の継投ノーヒットノーランを達成している。84年の第3戦でプロの技(?)を見せたのがペナントレースでは江川のライバルだった
掛布雅之(阪神)。ふだんは三塁手の掛布だが、同じ三塁手の
原辰徳(巨人)が代打で登場したことで遊撃に回り、慣れないポジションだったが、7回表には併殺を完成させている。
文=犬企画マンホール 写真=BBM