73本塁打のボンズは?

現在、ア・リーグの本塁打王争いでトップを走る大谷(写真=Getty Images)
エンゼルスの
大谷翔平は、7月19日現在(日本時間)、87安打を放っているが、内訳は単打30、二塁打19、三塁打4、本塁打34。話題になっているのが、本塁打が単打より4本多いこと。シフトを敷かれていて引っ張ったゴロがアウトになることが非常に多いことと、単打のはずが卓越した走力で二塁打にしてしまうのが一因とも言える。一方、誰もいない三塁前にセーフティーバントを決めているので、そちらでは単打を稼いでいる。
メジャー・リーグで「本塁打>単打」を達成した選手がいるのか、本塁打王獲得者を中心に調べてみた。

メジャーのシーズン最多73本塁打をマークしているボンズ(写真=Getty Images)
メジャーでのシーズン最多本塁打は2001年、ジャイアンツのバリー・ボンズの73本。その年、ボンズは156本の安打を放ったが、その内訳は単=49、二=32、三=2、本=73で、本塁打が単打を24本も上回っている。ボンズは本塁打が上回ったのはこの1年だけだったが、1998年に70本塁打を放ったカージナルスのマーク・マグワイアは複数年「本塁打>単打」がある。1995年から2001年の成績を見てみよう(97年途中まではアスレチックス、◎は本塁打が単打を上回っている)。
年度 試合 安打 (単 二 三 本)
1995(ア) 104 87 (35 13 0 39)◎
1996(ア) 130 132 (59 21 0 52)
1997(ア) 105 104 (46 24 0 34)
1997(カ) 51 44 (17 3 0 24)◎
1998(カ) 155 152 (61 21 0 70)◎
1999(カ) 153 145 (58 21 1 65)◎
2000(カ) 89 72 (32 8 0 32)
2001(カ) 97 56 (23 4 0 29)◎
当時の新記録となった70本塁打を放った1998年の単打は61本。9本差があったが、これがマグワイアの最高。翌1999年も65本塁打を記録したが、このときも単打は58本で2年連続で「本塁打>単打」をマークした。そのほか、規定打席に達してなくても、2001年は本塁打が上回り2000年も同数と、本塁打はマグワイアの代名詞だった。ただ上回っていても最高が9本。ボンズの24本というのはとてつもない数字と言える。マグワイアは通算では583本塁打をマークしているが、通算安打は1626本で単打は785本。安打のうち本塁打が占める割合は35.9%と、3本に1本は本塁打だった。シーズンではやはり70本の1998年の46.1%。これを上回るのがボンズの2001年で46.8%だ。現在の大谷は39.1%。2人には及ばないが、これもかなりの数字と言える。
打率最下位の本塁打王が……

87年に39本塁打でタイトルに輝いたランス(写真=BBM)
さて、日本プロ野球で「本塁打>単打」はいるのか。規定打席以上をチェックしてみたが残念ながら皆無。本塁打と単打が同数というのが1人いる。
1987年、
広島に在籍した
ランスだ。ランスはその年に来日。前年まで2年連続三冠王だった
阪神・バースに2本差をつけ39本塁打でタイトルを獲得した。本塁打王に輝いたものの、バッティングの確実性とは無縁の打者で、打率.218はリーグ最下位の33位。安打88本で単打は本塁打と同数の39本。安打中本塁打が占める割合は44.3%でこちらはボンズ、マグワイア並だった。
単打のほうが多いが、その差が10本未満だったのは、
選手 年度 安打 (単 二 三 本)
田淵幸一(阪神) 1974 113 (54 14 0 45)
ジョーンズ(近鉄) 1974 93 (42 12 1 38)
ジョーンズ(近鉄) 1976 92 (43 12 1 36)
ソレイタ(
日本ハム) 1980 107 (53 9 0 45)
中村剛也(
西武) 2008 128 (54 24 4 46)
中村剛也(西武) 2009 143 (57 37 1 48)
バレンティン(
ヤクルト)2013 145 (68 17 0 60)
の5人、7度。
ジョーンズとソレイタは「三振かホームランか」の典型的な一発屋助っ人。本塁打のシーズン記録を作ったバレンティンは単打とは8本差。こちらはリーグ2位の打率.330をマークしていた。規定打席に44打席足りなかったが、1989年の西武・
デストラーデは32本塁打を放ち、単打は31本。わずか1本だが、本塁打が上回った。デストラーデは翌年から3年連続本塁打王に輝いた大砲。
こうやって、日米の選手を見てみるとやはり生粋のスラッガーばかり。大谷は本塁打王の期待が掛かるが、「本塁打>単打」というレアな記録にも注目して後半戦も見ていきたい。
文=永山智浩