昨季は自己最高の成績
前半戦を終えて借金12で5位に低迷する広島。その中で大きな誤算だったのが堂林翔太だった。開幕直前にコンディションを崩し、春先から打率1割台に低迷。5月に入るとスタメンを外れる機会が多くなり、6月21日にファーム降格する。打率.184、0本塁打、4打点は寂しい数字だ。
長いトンネルを抜け出したはずだった。昨季は主に三塁の先発で111試合出場し、12年以来8年ぶりの規定打席に到達。打率.279、14本塁打、58打点と自己最高の数字を残した。復活のカギは打撃フォームの改造にある。
プロ3年目の12年に当時の
野村謙二郎監督に抜擢され、全試合出場で打率.242、チーム最多の14本塁打をマーク。広角に長打を打てるスケールの大きい打撃が魅力だったが、変化球にもろく三振も多かった。大味な打撃で確実性が上がらない。その後は定位置をつかめず、19年は過去最少の28試合出場で打率.206、0本塁打と精彩を欠いた。背水の陣を迎えた堂林は同年オフに年下の
鈴木誠也の自主トレに志願参加。頭が突っ込む悪癖を指摘され、下半身主導の打撃フォームに修正すると、確実性が格段に上がった。手元までボールを引き付けることで、ボール球を振る場面も減った。
昨季は開幕から好調を維持し、序盤は首位打者を突っ走るなど安打を量産。かつての恩師で野球評論家の野村謙次郎氏は、週刊ベースボールで堂林の打撃フォームを連続写真で分析した際、「体が開くのを嫌い、意識的に制限したフォームだと感じます。ポイントを近づけても体の面を残して絶対に開くことだけは避けるんだ、という強い考えが見て取れますね。自分の欠点を理解し、それを出さないためのフォーム改造が今年、成功したというわけです。堂林翔太選手に関しては、ホークスの二軍の試合を解説する際に、(昨年までは)よく見ていましたが、やはり開くのが早く、ツボにはまれば大きいのが飛びますが、外の変化球にからっきしダメだったり、抜かれると引っ掛けて終わり、というシーンが目立っていました。そこには強い打球を打とうという考えとともに、差し込まれるのがイヤ、という考えもあったと思います」と語っている。
代わって台頭してきた若手

5月下旬から三塁でスタメン出場し、結果を残している林
ところが、今季は体調が万全でないことも影響してか、打撃に本来のキレが見られなかった。相手のマークが厳しくなったことも影響しているのだろう。長打性の打球が少なくなり、三振が増えた。3、4月は24試合で21三振。5月以降も調子が上がってこない。6月に登録抹消されたが、再び三塁の定位置をつかむのは容易ではない。
打撃不振の堂林に代わって頭角を現したのが、左の長距離砲として快音を連発している高卒プロ3年目の
林晃汰だ。5月18日に一軍昇格すると、41試合出場で153打数50安打、打率.327、4本塁打、22打点の好成績をマーク。得点圏打率.405と勝負強さを発揮している。
「鯉のプリンス」と呼ばれた堂林もプロ12年目。若手が台頭している中で意地を見せられるか。ファーム暮らしからはい上がることを広島ファンは願っている。