福島 vs. 宮城?

日本代表対ドミニカ共和国が行われた福島県営あづま球場
この東京オリンピックで野球、ソフトボールの試合が開催される福島県営あづま球場。東北や福島県と縁がないファンにとっては、なじみの薄い球場かもしれないが、1986年に完成して以来、たびたびプロ野球の公式戦が開催されてきた。2005年に東北は仙台で誕生したのは
楽天だが、その本拠地は楽天生命パーク宮城(県営宮城球場)。東北地方では人口でも群を抜く宮城県にある。20世紀には一時期、
ロッテが準フランチャイズとしていたこともあり、開催された試合数でも宮城県が東北でダントツの1位だ。
だが、福島県も宮城県の後を追うばかりではない。球場の歴史では決して負けていないのだ。在宅ワークで信頼できる資料に限りがあるものの、2014年の数字をベースに振り返ってみる。東北地方でプロ野球の公式戦が本格的に開催されるようになったのは1950年。1リーグ制から現在の2リーグ制へと移行したシーズンだ。以来、東北の各県では、それぞれ複数の球場で公式戦が開催されてきた。福島県は9(会津若松市営、福島市営信夫ヶ丘、県営あづま、あいづ、開成山、平、いわきグリーンスタジアム、郡山麓山、白河市営城山)。これは東北6県では最多の数字だ(青森6、秋田4、岩手5、宮城3、山形5)。そんな福島県の県庁所在地、福島市に位置するのが県営あづま球場というわけだ。
また、東北地方で唯一、1リーグ時代の公式戦が開催された資料が残るのが郡山麓山球場。つまり、東北地方で初めてプロ野球が開催された球場ということになる。それは48年5月14日、
巨人と金星(のち大映。58年に毎日と合併してロッテの前身に)の一戦だった。この試合、首都の東京を本拠地に、現在も盟主として君臨する巨人を相手に、歴史に消えた金星が健闘。約2万人の観客を前に投手戦が展開され、ようやく7回に巨人が“打撃の神様”
川上哲治の本塁打などで先制するも、そこから金星が食らいついて、5対3で逆転勝利を収めている。
復興五輪だという。福島県は無観客だが、試合は開催され、選手たちは野球を戦う。いいゲームになることを願う。
文=犬企画マンホール 写真=BBM