甲子園でもパワフルな打撃

高松商の2年生スラッガー・浅野翔吾は智弁和歌山との3回戦(8月24日)で6回に左越えのソロアーチ。強烈なインパクトを残した
■8月24日 3回戦
智弁和歌山5-3高松商
試合後のオンライン会見で、異例の「主将内定」である。高松商(香川)・長尾健司監督は智弁和歌山との3回戦(8月24日)で敗退(3対5)後、新チームの方向性を言及した。2年生の主砲・浅野翔吾について「キャプテンとして、どういうチームにしたいのか。リーダーシップを取り、精神的にも成長した選手になってほしいです」と期待を込めた。
この試合で、浅野は高校通算35本塁打となるソロアーチを左翼スタンドへ運んだ。オンライン会見における「指名選手」として、長尾監督の横に控えていた。とはいえ「浅野主将」はまだ、公になっていない状況である。
指揮官はカメラの前でやや慌てながら「(本人は)やる! と言っている。(浅野へ確認すると)やるな?(うなずいたのを確認して)やるそうです(苦笑)」と話した。2年生以下の新チームとなる、明日のミーティングを経て正式決定となるが、長尾監督は「明日、浅野が集めてやるんじゃないですか」と、チーム内部では既成事実のようであった。浅野本人も「1年生大会のときからキャプテンをやっている。そのままかなと思います。(主将を)したい気持ちはあります」と自覚十分だ。
今大会の打棒は「2022年のドラフト候補」として、これ以上ないアピールとなった。2試合で7打数4安打2打点とパワーあふれるスイングを披露した。打席では体の軸がブレず、コース、球種にも対応できる柔らかさがある。
1年夏の香川県高野連主催の独自大会から不動の「三番・右翼」だったが、今春の県大会からは二番へと打順が変わった。
「二番でつなぐ意識を持つようになってから、本塁打数も増えている。新チームも本田(倫太郎、2年)が後ろに入るでしょうから、これからもつなぎの意識でいきたいと思います」
春2度、夏2度の全国優勝を誇る1909年創部の伝統校・高松商は今大会、大正、昭和、平成、令和と、四元号での勝利を達成した。14年に就任した長尾監督は16年春のセンバツ準優勝へ導き「古豪復活」を印象づけた。今夏は1970年以来の8強進出を逃すも、甲子園に確かな足跡を残した。
「浅野は先輩の背中を追いかけてきた。3年生の姿勢、取り組みを目に焼きつけている。ぜひ、良い野球部に受け継いでほしい」
右のスラッガーとしては「もっと、恐ろしいバッター。相手の嫌がるバッターになってほしい」と話した。浅野は「(甲子園は)とても良い場所でした。パワーアップして(また)出場したい」と抱負を語っている。
屋島中時代は侍ジャパンU-15代表でプレーし、将来の夢は「プロ野球選手」。1日2試合で5本塁打を放ったという逸話もある、超攻撃的二番の最終学年から目が離せない。
文=岡本朋祐 写真=石井愛子