右ヒジ痛に苦しんだ大学時代

日本通運の156キロ右腕・柴田大地は都市対抗埼玉一次予選代表決定戦(対テイ・エステック、9月5日、大宮)で、9回1イニングを無安打無失点に抑え(4対2)、第1代表での南関東二次予選進出へ貢献した
高校3年間で背番号1を着けたことがなく、大学4年間で公式戦未登板の右腕がドラフト候補に名乗りを上げている。
日本通運のパワーピッチャー・柴田大地だ。180センチ90キロの堂々とした体格から最速156キロを投げる。
日体大荏原高(東京)時代は1年秋からベンチ入り(背番号11)し、2年秋以降は「10」。最速142キロを投げた3年夏は主戦として投げたものの、東東京大会4回戦敗退で、甲子園とは縁がなかった。
日体大では合流直後に右ヒジを痛めた。手術は回避し、かつて
田中将大(現
楽天)、
斎藤佑樹(現
日本ハム)らが受けたPRP療法(注射)を選択したが、なかなか好転しなかった。
2年春のオープン戦で実戦登板を果たすが、同夏に痛みが再発。卒業後のプレー継続を目指すため、4年春の復帰を照準に、リハビリを重ねた。リーグ戦未登板も、かねてから潜在能力を評価していたのが19年まで日本通運を率いた藪宏明前監督であった。「将来性」に惚れ込み、同社への採用が決定。ブルペンでは最速149キロを計測するまで回復していたが、右ヒジには不安を抱えたまま。柴田は大学4年の4月、社会人野球への道が開けたタイミングで「じっくり治したほうがいい」との周囲からの助言もあり、トミー・ジョン手術を受けている。
入社1年目はほぼリハビリ期間に充てた。11月に実戦復帰し、1イニング限定でオープン戦3試合に登板。2021年に希望の光が見えた。
春先のシート打撃で150キロの大台を突破し、5月のオープン戦では154キロにアップ。同月のJABA東北大会で公式戦デビューを遂げた。そして8月27日、鷺宮製作所とのオープン戦で自己最速を2キロ更新する156キロを計測。145キロ前後のカットボールは鋭く落ち、NPBスカウト注目の存在となっている。
「いつかは、見返してやる!」
日体大では1学年上に
松本航(現
西武)、
東妻勇輔(現
ロッテ)、同級生は
吉田大喜(現
ヤクルト)、そして1学年後輩は
森博人(現
中日)と4人の右腕が大卒でプロ入りしている。
「先輩や同期、後輩が投げる姿を見て『いつかは、見返してやる!』という思いを持ちながら取り組んできました。負けたくないです」
大卒2年目は社会人選手のプロ解禁であり、柴田は「今までお世話になった指導者に恩返しする意味でも、プロで活躍したいです」と目を輝かせる。ただし、自身の進路の前に「拾ってもらった会社に貢献したい」と語る。
都市対抗埼玉一次予選代表決定戦(対テイ・エステック、9月5日)では、9回1イニングを無安打無失点に抑えた。日本通運は第1代表で28日からの南関東二次予選を控える。
練習では3日連続でブルペン入りするなど、状態を上げている。「(二次予選では)3~4連投できるように準備しています」。就任2年目の澤村幸明監督は「一つひとつ段階を踏んできました。実戦での経験を積めば、もっと上がってくるはず」と23歳に期待を込める。日本通運の新ストッパー・柴田が7年連続での東京ドーム出場へけん引していくつもりだ。
文=岡本朋祐 写真=桜井ひとし