読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は外野守備編。回答者はゴールデン・グラブ賞に9度輝いた名手、元西武ほかの平野謙氏だ。 Q.フットワークはなぜ重要なんですか。足をそろえて投げる子どもをどう指導していけばいいですか。(神奈川県・匿名希望・37歳)

西武時代の平野謙氏
A.順番を意識することも大事で、力がうまく指先に伝わるように フットワーク、要するに足運びは、正しい送球をするために、とても重要なことです。なぜと言われると、「重要だから重要なんです(笑)」と答えたくなるところですが、外野手だけでなく、内野手、捕手、どのポジションも同じだと思います。
例えば、キャッチボールで投げるとき、わざと両足をそろえ、相手に正対して投げると、ボールに勢いがつかず、遠くまでは投げられません。足をそろえて投げる子ども、ということは小学校の低学年くらいでしょうか。とにかく早く投げなきゃと思ってのことでしょう。ただ、中学生、高校生になってもフットワークがきちんとできておらず、捕った態勢から、そのまま体を開いたまま投げてしまったりしている姿もよく見ます。
小学生くらいの子どもたちへの指導なら、最初はあえて足をそろえたキャッチボールをさせてみてもいいかもしれないですね。その窮屈な投げ方から、次に相手に向かって、要は投げる方向に向かって足を出して投げる。びっくりするほど楽に投げられるはずです。ボールは子どもにとっては、とても重いものなので、腕だけで遠くまで投げることは絶対にできません。これはバッティングも同じですよね。順番を意識することも大事で足を踏み出し、ヒザを使って、腰を使って、下半身からの力がうまく指先に伝わる動きをするのです。

イラスト=横山英史
実際の流れを説明するなら、ステップに関してはフライやゴロ、どの方向の打球かで全部違いますが、そこに向かうまでは大きく、少しでも早く向かい、捕球時は送球も考え、ゴロや余裕があるなら合わせるため小刻みに。あと特に前方からの打球はボールと衝突するとミスの可能性が増えるので、勢いがついているときは速度をゆるめて合わせます。
捕球してからは、細かいステップで投げる姿勢をつくり、しっかり投げたい方向に足を踏み出し、体重移動をしながら投げる。外野手も投げ方がおかしくなると、
秋山幸二(元西武ほか)などもピッチングをしていました。足を上げてしっかり軸足に力をためて踏み出して投げる。投手の形は基本だからよく練習していました。足の使い方はケースバイケースなので、いずれまた違う質問に対し答えるときもあると思いますが、下半身を使わないと余計な力が入ってしまうものでもあります。
●平野謙(ひらの・けん)
1955年6月20日生まれ。愛知県出身。犬山高から名商大を経て78年ドラフト外で
中日入団。88年に西武、94年に
ロッテに移籍し、96年現役引退。現役生活19年の通算成績は1683試合出場、打率.273、53本塁打、479打点、230盗塁。
『週刊ベースボール』2021年9月6日号(8月25日発売)より
写真=BBM