巨人で熾烈な正捕手争いが繰り広げられている。強打が魅力の
大城卓三が正捕手に最も近い存在だったが、前半戦はファーム暮らしの長かった
小林誠司が9月に入り先発マスクをかぶる試合が急増している。さらに、攻守で総合力が高い
岸田行倫も定位置奪取を虎視眈々と狙っている。リーグ3連覇は厳しい状況だが、CSで日本一へのチャンスが生まれる可能性がある中、扇の要になる存在は誰になるだろうか。
※数字は10月6日現在 スケールの大きい打撃

巨人・大城卓三
・大城卓三
※今季成績 113試合出場、打率238、11本塁打、36打点
※通算成績 398試合出場、打率.258、30本塁打、124打点
強肩強打の大型捕手。スケールの大きい打撃は球団OBの
阿部慎之助を彷彿とさせる。勝負強さも発揮しているが、潜在能力を考えれば20本塁打以上は打てる。大城は入団1年目の2018年に週刊ベースボールのインタビューで自身の打撃について、「やっぱり、初球から打ちにいって、広角に打てるところが
セールスポイントだと思います。甘ければ大きいのも。でも、長打は狙って打っているわけではありません。強い打球を心掛けていますね」と分析している。19年に自己最多の109試合出場で打率.265、6本塁打、30打点をマーク。昨年はチームトップの71試合スタメンマスクをかぶり、93試合で打率.270、9本塁打、41打点とリーグ連覇に貢献した。盗塁阻止率も前年の.172から.340と成長の跡が見られる。
今季は自身初の2ケタ本塁打に到達したが、確実性を欠き打率が上昇しない。配球面でも識者から疑問を指摘されることが多くなり、9月に入ると6試合連続でスタメンマスクを外れ、5日の
ヤクルト戦(神宮)は一塁で先発出場した。どんなポジションでも試合に出場できることに価値があるが、正捕手をつかむのが本望だろう。
巻き返しのチャンス

巨人・小林誠司
・小林誠司
※今季成績 58試合出場、打率.100、1本塁打、3打点
※通算成績 679試合出場、打率.212、15本塁打、137打点
かつての正捕手は巻き返しに大きなチャンスを迎えている。強肩はリーグ屈指。ブロッキング技術、投手の良さを引き出す強気のリードに定評があり、投手陣から絶大な信頼を誇る。2016年から4年連続リーグトップの盗塁阻止率をマーク。正捕手を勝ち取ったかに見えたが、捕手はチームを勝たせてこそ評価される。小林が正捕手だった16~18年は
広島がリーグ優勝を飾ったため、手厳しい評価も少なくなかった。19年は92試合出場と4年ぶりに100試合に届かず。昨年は左尺骨骨折で長期離脱するなど自己ワーストの10試合出場に終わり、打率.056、0本塁打、0打点。屈辱的な数字に小林が一番悔しさを感じただろう。
今季もファーム降格を経験したが、9月は11試合でスタメンマスクと出場機会が増えている。守備力は申し分ないが、課題は打撃だ。打率が1割台では首脳陣も勝負どころで代打を送らざるを得なくなる。時に目の覚めるような一発を放つなど決して非力ではない。1つも落とせない試合が続く10月に存在感を発揮したい。
野球センスに定評あり

巨人・岸田行倫
・岸田行倫
※今季成績 23試合出場、打率.167、0本塁打、2打点
※通算成績 61試合出場、打率.235、1本塁打、7打点
「将来の正捕手」の呼び声が高いのが若手成長株の岸田だ。報徳学園高で甲子園に2度出場し、強肩強打の捕手として名を轟かせる。高3時の2014年に「U-18アジア野球選手権」の高校日本代表では三番に。ちなみに四番が現在チームメートで同学年の
岡本和真だった。社会人・大阪ガスでも入社1年目から正捕手を務め、「社会人No.1捕手」とドラフト前から注目される存在に。18年ドラフト2位で巨人に入団。3位が同じ捕手の大城だった事実が評価の高さを表している。
高校時代は投手、遊撃手も務めるなど野球センスに定評があり、試合に出れば水準以上の結果をきっちり出す。昨年は左投手に対して15打数8安打、打率.533、1本塁打と驚異的な数字を残すなど34試合出場で打率.302をマーク。スタメンマスクは8試合にとどまったが、打撃で首脳陣に猛アピールした。大城、小林との定位置争いでチャンスが多いわけではないが、勝利という目に見える結果で爪痕を残したい。
写真=BBM